優遇除外、日韓の亀裂深まる 日本「WTO違反ない」
日本が韓国向け輸出管理の厳格化を決めたことを巡り、日韓両政府の亀裂が深まっている。日本は安全保障を目的とした見直しで「世界貿易機関(WTO)協定違反でない」と強調する。韓国は日本を批判するとともに、輸入先の分散による「脱・日本」に動く。
韓国政府は3日に臨時閣議を開き、日本政府による韓国の優遇対象国除外に対応した予算2732億ウォン(約240億円)を迅速に執行する方針を決めた。日本からの輸入が滞ることを想定し、日本に依存する部品・素材の輸入先の多角化や国産化を急ぐ。
洪楠基(ホン・ナムギ)経済副首相兼企画財政相は2日、日本への対抗措置として「韓国も優遇対象国から日本を外し、輸出管理を強化する」と表明した。半導体メモリーは現在、輸出管理の対象となる戦略物資には含まれていないが、韓国メディアは半導体メモリーも武器転用の恐れがあると政府が判断すれば、輸出規制の対象にできるとの政府関係者の見方を伝えた。
ソウル市中心部の日本大使館近くでは3日夜、文在寅(ムン・ジェイン)政権を支持する革新系団体の主催で安倍政権を糾弾する集会が開かれた。1000人を超える市民が参加し、「不買運動で日本の経済報復と闘おう」などと訴えた。
一方、世耕弘成経済産業相は3日、北京で開かれた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)閣僚会合後の記者会見で、会合中に韓国から日本の輸出管理の厳格化に関する発言が2回あったことを明らかにした。世耕氏は会合で「安全保障を目的にした見直しでWTO協定違反ではまったくない」などと反論した。
日本政府は2日、韓国向け輸出管理の厳格化を閣議決定した。韓国側の反発について、世耕氏は「輸出管理上の措置として粛々とやっている。東南アジア諸国連合(ASEAN)の国々と同じになるだけだということを理解いただきたい」と述べた。
河野太郎外相は3日、バンコク市内で記者団に「(ASEAN各国と)輸出管理で貿易上の問題が起きていることは全くない」と強調した。韓国がASEAN諸国との会合で日本を批判したことに関して「ほとんどの参加国は何が争点になっているのかあまりよくわからないのではないか」と指摘した。
(ソウル=鈴木壮太郎、北京=杉原淳一)