ホンダ、インドが試す底力 4~6月期は営業減益
インドでホンダの二輪販売が落ち込んでいる。ホンダが2日発表した2019年4~6月期連結決算は、営業利益が前年同期比16%減の2524億円だった。二輪が稼ぎ頭のホンダで最大市場のインド減速は影響も大きいが、あくまで強気の姿勢を見せた。20年3月期通期の二輪販売見通しは上方修正したのだ。世界経済の不透明感が強まる中、景気変動の武器となる二輪でホンダは底力を示せるのか。
4~6月期の二輪販売台数はインドが2割減となった影響などで前期比8.1%減の492万1千台にとどまった。四輪もインド市場が苦戦し、20年3月期の四輪販売見通しを5万台減の511万台に引き下げた。
背景にはマクロ的な経済要因がある。5月のインド総選挙の影響で買い控えが発生。中央銀行が金融引き締め策を導入したことで消費者の購買意欲が落ち込んでいることも影響する。
ホンダのインド事業は二輪が光る。インドの二輪シェアは2位でかつてのパートナー、最大手ヒーロー・モトコープを射程に捉える。一方の四輪は苦戦する。マークラインズによる19年上期の乗用車販売シェアは7%と60%に迫るスズキの背中は遠い。
それでも決算会見で倉石誠司副社長は「インドは我々の想定以上にいい。下期から回復できる」と強気だった。20年3月期の二輪販売見通しもベトナムなどでの販売好調から10万台増の2035万台に引き上げた。
ホンダ最大の経営課題である四輪の収益向上はまだ途上だ。4~6月の四輪の営業利益率は4.4%と前年同期(5.3%)より落ち込んだ。ホンダ内で二輪の存在感がさらに高まる可能性が強い。
8月に入って世界経済の先行き不透明感が強まる。米トランプ大統領は1日、ほぼすべての中国製品に関税を課す「対中制裁第4弾」の9月発動を表明。円高も進み2日午後は1ドル=106円台を付けた。対して、倉石副社長は「ホンダは他社に比べて変化に強い」と語った。
それは景気悪化の影響を受けにくい二輪が収益の支えとなっていること。四輪でも「中国でほぼ100%」(倉石副社長)の業界トップクラスの現地生産比率から為替変動に強いことがある。
例えば対ドルで1円の変動が営業利益に与える影響(為替感応度)はトヨタ自動車は約400億円。ホンダは120億円だ。リーマン・ショック後、歴史的な円高が国内製造業を襲った時にホンダは09年3月期から3期連続で国内車メーカーの純利益でトップとなった。
世界経済の荒波を強みの二輪でしのぎ「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の分野で反攻ができるか。ホンダの底力が試されている。
(古川慶一)