2新人登院に重度障害者の期待 介助費補助も論点に
1日に召集された臨時国会で、重度の障害がある2人の新人議員が初めて国政の場に足を踏み入れ、意見を表明した。障害者と社会の関わりを変えるきっかけになるかもしれない――。難病を抱える人たちはそう期待する。2人の国会入りで、仕事中の介助費を国が補助することの是非も新しい論点として浮上した。
れいわ新選組の船後靖彦氏(61)と木村英子氏(54)は1日、大型の車いすで初登院した。船後氏は次第に全身が動かせなくなる難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」で、木村氏は脳性まひで右手以外の体をほとんど動かせない。新議長を選ぶ本会議で2人は介助者に代理記名してもらい、参院の職員に1票を託した。起立採決も介助者の挙手で賛成を表明した。
「難病患者らが国政の場で活躍するのは画期的。本当にうれしい」。一般社団法人「日本難病・疾病団体協議会」(東京)の常務理事、辻邦夫さん(59)は2人の初登院を喜んだ。
辻さん自身も神経難病があり、月1回の通院やステロイドの服薬が欠かせない。同会では難病患者や支援者らが署名を集め、医療制度の充実などを国会に求める請願活動を続けてきた。「当事者にしか分からないことがある。(2人が)どんな配慮を望むのか1つずつ声を上げ、国会や社会に伝えてほしい」という。
参院は召集に向け、大型車いすでも入れるように議席を改修。正面玄関に仮設スロープを設けるなど国会のバリアフリー化を進めた。採決でも、介助者が代理で賛否を表明することや意思疎通のためのノートパソコンの持ち込みを認めた。
2人が訴えてきた議員活動中の介助費の公的補助も、参院は当面負担することを決めた。2人が利用している「重度訪問介護」は、自宅での食事や入浴などの介護では9割補助されるが、通勤や仕事中は厚生労働省が補助の対象外としていた。「勤務中でも介護保険を認めてほしい」。SNS(交流サイト)にはこんな書き込みが相次いだ。
全国自立生活センター協議会(東京)の常任委員、秋山浩子さん(55)は「介助費は公的な制度で給付を認める必要がある」と主張する。船後氏と同様、筋力が低下する進行性の難病を持つ秋山さんは介助者が欠かせない。「現在の制度は事業者や個人の負担が前提で、費用負担できずに仕事を諦めている人がたくさんいる」と訴える。
自身も電動車いすを利用し、介助を受けながら医師として働く東京大の熊谷晋一郎准教授は「家の外に一歩出ると公的な介護を受けにくくなる現在の制度は介助を受けて働く人を想定していない。これを機に、望ましい社会のあり方について議論が深まればいい」。
慶応大の中島隆信教授(障害者雇用問題)は「国会議員は国民が選んだ代表で、それぞれが能力を最大限発揮できることが社会にとって望ましい」と2人の登院を歓迎。「ネット中継を利用した委員会への出席なども含め、柔軟に見直していく必要があるのではないか」と話している。