大谷、光る積極性 日本選手最多アーチも視野に
米大リーグ、エンゼルスで2年目のシーズンを戦う大谷翔平の後半戦に大きな期待が集まっている。右肘手術から復帰して打者に専念する今季は、6月に32安打、9本塁打、22打点といずれも月間自己最多の数字をマーク。オールスター後にぴたりと止まっていた本塁打は、27日に60打席ぶりとなる15号が飛び出した。2018年は8、9月で計13本塁打とペースを上げた大谷が、松井秀喜氏がヤンキース時代の04年に記録した日本選手のシーズン最多31本にどこまで迫れるか。(記録は29日現在)
今季の本塁打のうち、6本は初球を打ったもの。大リーグ投手の球筋に慣れてきたのもあってか、積極性が光る。スタメンに入ると3番・指名打者に固定される今季、2番にはリーグ屈指の強打者で、四球も多いトラウトが座ることが多い。投手がトラウトに神経を使った後に迎える打席で「甘いゾーンに来た球は一発目から捉える」という自身のテーマの一つが実践できているようだ。
7月7日のアストロズ戦では、三回の第2打席で相手右腕の初球、やや真ん中に入ってきた速球を見逃さず、左中間席の看板を直撃する2ランを放った。打球角度34度、滞空時間6秒の高い放物線を描き、逆方向へと運んだ一撃は、まさに「大谷らしい」当たりだった。
中堅から左翼方向にかけての本塁打は、新人で22本を放った18年が14本で、今季は15本のうち11本。逆方向への一発の比率がより高まっている。「際どいボール球を見極め、甘い球をしっかり自分の形で打てればいい」と語っていたとおり、球をホームベース側に呼び込み、強く打とうとする姿勢が数字から読み取れる。
7月5日には大リーグを代表する豪腕投手のバーランダー(アストロズ)と対決。第1打席はボール球になる低めのカーブにバットが止まらず、3球三振を喫した。だが、三回の第2打席では初球、同じようなカーブを打ちにいきながら見送り、2球目の高めに浮いた152キロに鋭く反応。中堅バックスクリーンに運ぶソロを放ち、高い修正力と学習能力を示した。
■打撃スタイルの変化、左腕にも効力
昨季は打率2割2分2厘と苦しめられた左投手との対戦成績も、今季は同2割7分1厘にまで向上している。もともと左投手に苦手意識はないと話していたが、球をより手元で見極めようとする打撃スタイルの変化が、カーブ、スライダー系の逃げる球で勝負してくる左腕に対しても効力を発揮しているといえそうだ。
7月16日には打者としての大リーグ出場が、1シーズンに相当する162試合に達した。その時点での通算成績は36本塁打、101打点をマーク。スラッガーとしての成長にますます期待が高まる。この日、本拠地アナハイムのエンゼルスタジアムでは、大谷のボブルヘッド(首振り)人形が配布され、多くのファンでにぎわった。大リーグ名物の人形にも起用され、名実ともにチームの看板打者となりつつある。
ア・リーグ西地区首位のアストロズに差をつけられてはいるものの、ワイルドカードでの5年ぶりプレーオフ進出にいちるの望みを託すチームを、ここぞの一打で勢いづけたい。
(常広文太)