ミャンマー工業相、汚職疑惑で辞任 政権に打撃
【ヤンゴン=新田裕一】ミャンマー大統領府は26日、キン・マウン・チョー工業相が辞任したと発表した。事実上の更迭で、政府関係者によると国営企業の調達を巡る汚職に関与した疑いが持たれていた。アウン・サン・スー・チー国家顧問が率いる与党、国民民主連盟(NLD)の政権で、汚職疑惑に伴う閣僚交代は2人目。2020年に総選挙を控え、汚職防止を訴えてきた党のイメージに打撃を与えそうだ。
工業相は16年のNLD政権発足時、地場の大手企業から登用された。後任は明らかになっていない。工業省は製造業を管轄し、関連する国営企業の運営と国全体の産業育成を担当する。
政府関係者によると、国営の医薬品製造会社の原料調達や救急車用の資材を巡り、入札手続きなしで不当に高い価格で物品を購入した疑いがあるという。
ミャンマーでは近年、汚職事件の発覚が相次いでいる。捜査権を持つ汚職防止委員会は7月に入って、入札手続きで不正があった疑いで電力・エネルギー省を家宅捜索した。政府関係者の話によると、同省上層部が捜査の対象となっている。
現政権下では18年、チョー・ウィン計画・財務相(当時)が汚職疑惑を受けて辞任した。汚職防止委は「証拠不十分」と結論づけたものの、市民の間ではNLD政権に対する不信感が広がった。19年3月には、複数の政府調達のケースで特定の業者に便宜を図ったとして、ミャンマー南部タニンダーリ管区首相が収賄容疑で逮捕された。
ミャンマーでは軍事政権が長く続き、汚職は当たり前とされてきた。今回の工業相の更迭は、政権として汚職問題に厳格に対処する姿勢を改めて示したともいえる。
NLDは15年の前回総選挙で「汚職のない政治を実現する」と訴えて大勝した。NLD政権下でも相次ぐ汚職疑惑は、20年11月に予定する総選挙に向け、軍政の流れを組む連邦団結発展党などの野党勢力に格好の攻撃材料を与えることにもなりそうだ。