パットに努力はいらない ストックトンの教え(下)
「カップに届くが、45センチオーバーはしない。3パットをなくす戦略を身につけよう!」
パッティングで最も嫌なことは3パットだ。苦々しく、腹が立ち、気落ちもする。何よりもその後のプレーのリズムを壊し、流れも悪くなる。それ故に、ストックトンは3パットをしないように全力を尽くしていた。史上最高に3パットしない選手だからこそ、パットの名手と呼ばれたのだ。
「3パットをしないためにはまずはタッチ。距離感を持つこと。不安や欲を捨て無心になれば、動物的本能でほとんどOKに寄せられるはずです。キャッチボールで暴投する人がいないように、誰でもできることなのです」
そのためにストックトンが目安にした距離感は次のことだ。
「パットは決してショートしないが、カップから45センチオーバーすることも絶対にしない」
このために練習ではカップの正面縁にティを刺し、カップの先45センチにもティを刺しておいた。
「パットを行って、正面のティに触れる感じでボールが転がること。外れてもカップの先のティーを越さなければナイスタッチです。これを2球打ったら、場所を変えて打つ。この練習を何度も繰り返して距離感を鍛えるわけです。3パットがなくなります」
実際のコースではどんなふうにパッティングを行えばよいのだろうか。
「ホールを攻略するように、グリーンも戦略を考えます。つまりどこに打っていけば、次のショットが打ちやすいか、グリーンに乗せやすいかを考えるように、どこに打てば2パットで収まるかを考えてパットを行うわけです」
具体的にはどういうことだろう。
「上りのパットでも打ち過ぎれば返しは難しい下りになってしまう。だったら入れたい気持ちを抑えて少しショートしたほうがいい。難しそうな下りのパットでも少しオーバーできれば、返しは簡単な上りになる。つまり入ればもうけものくらいに考えて3パットになるようなファーストパットは絶対にしないということです。次のパットを考えて今のパットを行うことです。それには決してカップにねじ込もうなんて考えない。カップに触れるくらいのタッチで常に打つことです」
「パッティングを向上させるドリルを4つ紹介しましょう」
ストックトンが自分の名前を書くようにパッティングができるようになるためのドリルを4つ教えてくれた。
1つめは左手甲を目標に動かし、しかも手を持ち上げないためのドリル。
「構えたときに、左手甲の少し先にグリップエンドを誰かに差し出しておいてもらいます。左手甲が目標に動き、しかも手を持ち上げていなければ、グリップエンドに左手甲が当たるというわけ。パターヘッドを低く保ってフォロースルーを行うためのドリルです」
1人でやる場合は、長いスティックを地面に刺して立て、スティックの先端を左手の甲の少し先にセットする。フォローで左手甲が当たればOKだ。
2つめのドリルはボールの先にティを埋め込み、ティの上をボールが通過するようにパットするもの。
「ラインを見ながら構えたら、ボールやフェースを見るのではなく、ライン上にあるボールの先のスパットを見るようにする。ボールを見ないことでスムーズなストロークができるからだが、そのためにティを埋め込んでおく。ティの上をボールが通過するように練習します」
3つめはカップの正面のエッジにティを立てておくドリル。
「このティにボールが触れるくらいの強さでパットする。微妙なタッチを養うことができる。立てたティーが倒れてしまうような強いパットは行わないこと。もちろんショートもだめ。さらにはカップから45センチ以上オーバーするのもNGです」
このために直径50センチの輪(ストックトンゴルフリング)を使って練習してもよい。リング内にボールが収まればナイスタッチだ。
4つめのドリルは左手だけでパターを持ち、ストロークするもの。
「このとき、左手の甲を折ると、ヘッドが持ち上がってしまう。左手甲はアドレスしたときの角度を保ってヘッドを低く維持してストロークする。パターのシャフトはフォローでも地面と垂直になっていることが肝心です。また、右手で左肩の上から手を置き、ストローク中、左肩が上がらないようにチェックするのもよい方法です」
(文:本條強、イラスト:サイトウ・トモミ、参考資料:Avery刊「UNCONSCIOUS PUTTING」、青春出版社刊「無意識のパッティング」、golfchannel.com、テーラーメイドゴルフ日本公式チャンネルなど)