瀬戸、「狙ってた」金メダルへ攻め貫く 世界水泳
殻を破った前日の200メートルバタフライの勢いそのままに、エンジン全開だった。「積極的にいくと決めていた。ぶれずに、後半もびびらずいった」。突進するかのようにゴールし、順位を確認すると「わーお」。両手の人さし指をつきたて、金の喜びにひたった。
事前に金を公言していたのは400メートル個人メドレー。ただ、こちらもひそかに優勝を狙っていたという。「調子いいのを隠してた。実は(400メートルで金を取った)2013年と同じ感覚だった」とにやり。ラスト50メートルも耐乳酸トレーニングの成果が表れ、パンパンの腕が大きく回りきった。「苦しんで頑張った成果。ご褒美だと思います」
これまでの最高成績は2年前の5位。3つの専門種目の中で優先順位は最も低かった。国内では同い年の萩野公介が第一人者。切磋琢磨(せっさたくま)しつつ、どこか相手に譲る部分もあったのだろう。
その萩野が4月の日本選手権を欠場。チームの期待を一気に背負い、初の男子主将を任された。SNS(交流サイト)で日記を回したり、合宿で全員が所信表明できる場を設けたり。心地よいチームづくりを思案するうちに、大黒柱としての自覚がより芽生えるようになった。
「有言実行というか、みんなの前で大きな目標を言ったからにはやるしかなくなった」とは梅原孝之コーチの弁。「楽な方向に逃げる」自分の弱さと戦いながら、苦手な練習とあえて一から向き合った。自己ベストが出ても喜びにひたるのは一瞬。世界の頂点のために、チームの先頭で大きな背中を見せてきた。
東京の切符はひとまずつかんだ。あとは本命の400メートル個人メドレーへ全てをぶつけるだけだ。「全部が(調子)いい。最終日まで自信をもっていく」。世界を驚かす、これ以上ない舞台が整った。(堀部遥)