上野の413球、悲願の「金」 2008年北京五輪
日本ソフトボール界に輝かしい歴史を刻んだ2008年北京五輪。宿敵だった米国の厚き壁を破るまでの道程はエース、上野由岐子の熱投なくして語れない。
準決勝の米国戦、3位決定戦のオーストラリア戦を1人で投げ抜き、翌日の米国との決勝でもマウンドに立った。世界が認める屈指の右腕といえども疲労は隠せない。全ては米国を倒して金メダルを取るため。積年の思いが過酷な状況で体を動かしていた。
2日間で3試合に完投、球数は計413球に達した。宿願かなって仲間に肩車され、人さし指を空に向けた姿は大会を彩る名場面のひとつとして語り継がれている。
北京を最後に五輪種目から外れたソフトボールは、残り1年を切った東京五輪で復活を果たす。開会式に先立って行われる7月22日の初戦は自身の38歳の誕生日という運命的な巡り合わせ。今年4月に打球が直撃して顎を骨折するアクシデントに見舞われたが、12年の時を経て再びあの勇姿が見られそうだ。