米ボルトン氏、安保巡り韓国にクギ 日米韓の協力確認
【ソウル=恩地洋介】訪韓中のボルトン米大統領補佐官は24日、韓国大統領府の鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長ら韓国高官と相次ぎ会談した。ロシアと中国の軍用機が島根県の竹島(韓国名・独島)周辺に接近した事案や、元徴用工や輸出規制で対立する日韓関係を巡り協議した。東アジアの安全保障環境を懸念し、韓国に日本との対立を自制するよう求めたとみられる。
韓国大統領府によるとボルトン氏と鄭氏は昼食をはさみ約2時間半、会談した。中ロの軍用機接近に絡み、軍事面で緊密な連携を維持すると確認。ボルトン氏は、ホルムズ海峡を航行する民間船舶の安全確保を巡り米国が同盟国に呼びかけている有志連合について協力を求め、鄭氏は協力策を協議していくと応じた。
日本に続き韓国を訪れたボルトン氏の狙いは、朝鮮半島を中心に揺れる東アジア情勢の安定管理だ。23日に韓国入りした後、ツイッターに「インド太平洋の安全と繁栄に欠かせない重要な同盟国の指導者たちと生産的な出会いを期待している」と投稿し、韓国側に戦略共有を迫る考えを示唆していた。
対中関係に配慮する韓国は、台頭する中国への対抗を念頭に日米が掲げる「自由で開かれたインド太平洋戦略」に及び腰だ。鄭氏との会談ではあえて米韓同盟について「朝鮮半島を超えて域内の平和と安定の核心軸だ」とする認識を確認した。
ボルトン氏は悪化する日韓関係の改善も求めた。康京和(カン・ギョンファ)外相とは「状況悪化を防ぎ、外交的解決を模索することが皆の利益にかなう」との考えで一致した。
鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相とは「日韓の安保協力を維持する」との方針を確認。韓国内では日本の対韓輸出規制を巡る反発から、日韓が防衛秘密を共有する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の見直し論まで取り沙汰されていた。
一方、中国・ロシア両軍機が23日、韓国の防空識別圏に入り、ロシア軍機が竹島空域を「侵犯」した。ボルトン氏訪韓を狙ったかのような中ロ軍機の共同飛行は、対立が深まる日韓の溝にさらにくさびを打つ格好となった。
24日付の韓国紙、朝鮮日報は、中ロ機が竹島空域に接近した際、韓国軍から18機、航空自衛隊から10機程度の戦闘機が出動したと伝えた。韓国国防省報道官は24日、竹島の領土問題を巡る日本による韓国への抗議に関し「日本側の主張は一顧の価値もない」と反発姿勢を示した。同日付の中央日報は、中ロ軍機の動きについて「韓日対立の隙を突き、安全保障協力を試したという分析もある」と伝えた。
今回の中ロ軍機の飛行を巡り、韓国大統領府は24日、ロシア側から領空侵犯について「意図したものではなく、機器の誤作動で計画外の地域に侵入した」との説明を受けたと公表し、事態の沈静化をはかった。しかしロシアは同日、これを全面否定する見解を韓国国防省に伝えた。ロシア側は「領空侵犯していない。むしろ韓国の軍用機が飛行航路を妨害して安全を脅かした」と主張した。
中国国防省の呉謙報道官も24日、中ロが日本海と東シナ海の公海上空で初の合同パトロールを実施したと発表。「両国軍の年度協力計画に沿ったもので、第三国に向けられたものではない」と述べた。