首相謝罪に「ここまで来た」 ハンセン病元患者家族
国の敗訴が確定したハンセン病家族訴訟の原告団は24日、安倍晋三首相と面会した。首相が謝罪した上で救済に向けた立法措置を講じる考えを示したことに対し、「胸がいっぱいになった」などと喜びの声を上げた。一方原告団が求めてきた「全員一律の被害補償制度」に関して明確な方針は示されず、原告団は「今後も実現に向けて働きかけたい」としている。
安倍首相は24日午前、首相官邸での原告団との面会で、深々と頭を下げて「筆舌に尽くしがたいご労苦をこれ以上長引かせてはならないと考え、判決受け入れを決定しました」と述べた。涙ぐむ原告一人ひとりと握手を交わした。
小学6年生の頃に父親がハンセン病施設に収容された原告団の林力団長(94)は「母と私は遠縁を頼り、名前を変え、隠蔽と逃亡の生活を続けた。家族を隠し続けることは苦難の人生だった」と首相に語りかけた。
他にも2人の原告が半生を振り返る文章を読み上げた。原告団によると、首相が目を潤ませる場面もあったという。
面会後に開かれた原告団の記者会見で、林団長は「父ちゃんここまできたよ、という思いで胸がいっぱいになった」と話した。
面会には差別を恐れて匿名で訴訟に参加していた原告20人も同席した。女性の匿名原告は「首相に正義を願いますと声をかけると、分かりましたと答えてくれた。今はその言葉をただ信じたい」と語った。
安倍首相は原告以外の家族も含めた補償について、立法措置を講じると表明した。原告団の黄光男副団長(63)は「謝罪の言葉が本当かどうかは、今後の法制度の内容で分かると思う」と話す。
原告団が国に最も強く求めているのは、全ての家族への一律補償だ。確定した熊本地裁判決では被害を認識した時期や地域、元患者との続き柄などによって541人の原告の賠償額は33万~143万円に分かれ、請求が棄却された人も20人いる。
面会でも判決で被害を一部認定されなかった原告から一律補償を求める訴えがあったが、安倍首相から明確な回答はなかったという。
弁護団の徳田靖之共同代表は記者会見で「一律の補償の実現は我々の課題であり、使命だ。なんとしても実現する」と力を込めた。
原告団は24日午後、根本匠厚生労働相とも面会。立法措置に向けた、国と原告団の具体的な協議がスタートする。