文政権、資産売却を静観 元徴用工問題も対決姿勢
【ソウル=恩地洋介】元徴用工や朝鮮女子勤労挺身(ていしん)隊訴訟の原告側弁護団は23日、三菱重工業の資産売却を裁判所に申請したと明らかにした。資産の売却手続きに入った日本企業は3社目だが、文在寅(ムン・ジェイン)政権は静観する構えだ。1965年の日韓請求権協定の無効化を企図する発言を繰り返し、日本との対決姿勢を強めている。
売却の対象は三菱重工業のロゴマークを含む2件の商標権と6件の特許権。韓国の裁判所は早ければ年末ごろ、日本製鉄や不二越と合わせて資産の売却命令を出すとの見方がある。
日本政府は請求権協定を踏まえて、日本企業に実害が生じないよう韓国政府に求めているが、文政権は「司法の判断を尊重する」として対応を避けてきた。
政権幹部は日本の植民地支配が「不法」だとする主張も強めている。19日には大統領府の金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長が「強制徴用という反人道的不法行為を通じ、国際法に違反したのは日本だ」と発言した。
こうした発言は、請求権問題は解決済みとの立場を継承してきた歴代政権の姿勢と異なる。韓国政府は過去に2度、元徴用工らに請求権協定を踏まえた個人補償を実施した。朴正熙政権は2年間で8万4千人余りに現金を支給。盧武鉉政権も2008年以降に追加の支払いを実施した。