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代表強化のその先へ リーグ間競争に生き残るには

FIFAコンサルタント 杉原海太

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スポーツの世界では、強い代表チームと人気のある国内リーグは「クルマの両輪」によくなぞらえられる。至極まっとうなロジックなのだが、グローバル化の波は時にそういう常識にも揺さぶりをかける。日本のスポーツ界も例外ではないように思う。

1993年に本邦初のプロサッカーリーグとしてJリーグが発足したころ、日本代表選手は全員がJリーガーだった。Jリーグを盛んにして中身を充実させることは日本代表(選手)の強化に直結したわけである。強くなった日本代表がワールドカップ(W杯)やオリンピックのような国際舞台で活躍すれば、代表人気はJリーグにも還元される。平成の時代、日本サッカーが急成長を遂げられたのは、そういう好循環を回せたからだった。

現在はどうだろうか。日本代表選手の大半は欧州各国のリーグでプレーしている。昨年のW杯ロシア大会、初戦のコロンビア戦で、先発のピッチに立ったJリーガーは昌子源(当時鹿島)だけだった。その昌子も今はフランスのトゥールーズ所属だ。このままいくと早晩、日本代表を構成する選手は全員が海外組という時代がやって来るのだろう。

こうした事態が国際環境の激変によってもたらされたことは論をまたない。大きな転換点が、95年12月に欧州司法裁判所がベルギー人のジャン・マルク・ボスマンというプロ選手の主張を全面的に認めた、いわゆる「ボスマン判決」だった。この結果、ヨーロッパ連合(EU)の労働規約がプロサッカー選手にも適用され、またクラブとの契約が満了した選手は自由に移籍できることとなった。

これ以降、EU加盟国の国籍を持つ者は外国籍選手としてカウントされなくなり、EU域内のサッカークラブで人材の流動化と多国籍化が加速し、自国の選手より外国籍選手の方が多いというチームの在り方も当たり前になった。一般社会のグローバル化と同じで、富める者はより富み、世界は差し出す側と受け取る側に分割されるようになった。英プレミアリーグ、スペイン、ドイツ、イタリア、フランスの五大リーグは世界中の優秀なプレーヤーをどんどん吸い込んで、クラブやリーグの階層化が国際的に猛スピードで進んだわけである。

選手の流出、Jリーグにはダメージ

93年にJリーグを用意していた日本は、一足先にプロリーグをスタートさせていた韓国とともに、このグローバル化の波に人材供給源として何とか対応できた。それがアジアで強国の地位を築かせたといってもいいくらいだろう。選手の国際間移籍はどんどん低年齢化し、青田買いが進んでいるが、日本も例外ではない。FC東京の久保建英が18歳でレアル・マドリードへ、20歳の安部裕葵が鹿島からFCバルセロナへ移籍したのは象徴的な例といえる。

Jリーグで十分に実績を積んでから海外挑戦するのではなく、Jリーグをほぼスキップして十代のうちにいきなり外国のクラブにスカウトされる。もし、久保が欧州で活躍するようなことがあれば、このような例はこれからさらに増えるのだろう。こうなると、代表チームの強化に役立っているのは自国のリーグというより、実質的に欧州のリーグやクラブということになり、JリーグやJクラブは金の卵を孵化(ふか)させる養成機関としての顔がさらに強まることになる。

それはそれで日本の選手育成力が世界的に認められた証しになるから胸を張っていいのだが、Jリーグのエンターテインメントとしての価値にはボディーブローのようなダメージを与え続けることになる。現役の日本代表及び未来の日本代表といえるタレントがどんどん自国の外に流出していくのだから。

こういう立場に置かれているのはJリーグだけではない。欧州にあってもオランダやベルギーは五大リーグに吸い込まれる側だ。ベルギーもオランダも強い代表チームを持つけれど、主力選手は自国のリーグにいない。昨季、オランダのアヤックスが欧州チャンピオンズリーグの準決勝まで進む一大旋風を巻き起こしたが、案の定、オフになると主力選手は次々と他国のビッグクラブに移籍していった。

こうした状況を踏まえて、私が思うのは、リーグは代表強化のためにあるという「常識」を立ち止まって疑ってみるということである。Jクラブのアカデミー(養成機関)が金の卵のゆりかごであることは全面的に肯定するし、今後もそうあるべきだ。が、現役の代表選手や未来の代表選手になるタレントがどんどん流出していく状況では、代表強化につながる選手の鍛錬は欧州のリーグやクラブがある意味、肩代わりしてやってくれるわけだから、リーグ間の厳しい国際競争に生き残るためには、Jリーグは選手の流出を補填するような「常識」にとらわれない抜本的な制度改革を行い、自らの魅力をもっと高めることを考えてみてもよいのではないだろうか。

地域密着とグローバル化を両立

Jリーグの成功は、実業団リーグだった日本サッカーリーグを、企業内スポーツから地域を巻き込んだクラブスポーツに転換させたことにあるとよく語られる。「地域密着」はJリーグが草創期に掲げた理念で、これを全国津々浦々に浸透させるためにクラブ数の拡大政策を採ってきた。理念の普及という観点に立てば、拡大政策は素晴らしいことなのだが、トップレベルの選手が流出する一方でクラブ数を増やせば、エンターテインメントとしてのコンテンツ価値を維持するのは至難の業だろう。

日本のプロ野球(NPB)は野茂英雄さんが米大リーグ(MLB)に挑戦するまで、移籍のルールにグローバル化の視点など1ミリもない立て付けになっていた。Jリーグはそれに比べれば、国際間移籍を前提にしたルールを最初から持っていたが、今のような国際的な人材の急激な流動化を想定していたわけではなかった。

それでもNPBはサッカーに比べると、有利な立場にある。MLB以外に強力な競争相手がいないから、MLBを念頭に2番手戦略をしっかり打てれば、国際競争に伍(ご)していける可能性は十分にあると思う。

サッカーは難しい。グローバル化の流れの中でJリーグと競合するリーグは世界中にたくさんある。リーグの価値は放送権料の値付けではっきりと可視化される。そういう状況の下で存在感を示すには、かなりメーターの振り切れた、グローバル化を前提にした戦略が必要に思えるし、これは地域密着というJリーグの理念と両立し得るものだと思う(実際に欧州の様々なクラブは「ローカル性」と「国際性」を両立していると感じる)。

バスケットボールのBリーグや、W杯開催を契機にさらなる成長が期待されるラグビーのトップリーグも同じことがいえる。昇降格をどうするといった内輪の話も大事だが、グローバル化を前提に、いろいろなものを設計していかないと激しいリーグ間競争に勝ち残れないだろう。

実は、その点で私は、親会社に国際的な企業が居並ぶ日本のラグビーは、かなりの潜在能力があるとにらんでいる。日本でプレーしたいと思う外国の選手を吸い寄せ、国際的なリーグ間競争に勝てるポテンシャルがあるのではないかと。素晴らしい外国籍の選手が集まるようになれば、日本の選手も自国にとどまってプレーするようになるだろう。

そのためには今、自分たちがどの階層にいて、その階層よりさらに上へいくには何が必要かを十分に意識して制度設計し、親会社の力を引き出す必要がある。

リーグ間競争を一番敏感に感じているのは実は選手たちだろう。どの階層でプレーするのが自分の夢や目的の実現にかなうのか。アスリートはそこを本能的にかぎつけ、よりいいリーグを目指すものだ。そういう越境をいとわないアスリートの本能に訴えかける立て付けが、これからのリーグには必要だろう。

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