オリオンビールCEOに早瀬氏、沖縄ブランド再建託す
元ルルレモン日本法人社長、マーケティング力 期待
オリオンビール(沖縄県浦添市)は22日、カナダのスポーツウエア大手、ルルレモン・アスレティカの日本法人社長を務めた早瀬京鋳氏(51)が同日付で社長兼最高経営責任者(CEO)に就く人事を発表した。早瀬氏は外資系の消費財メーカーでマーケティングの経験を積んできた。野村ホールディングス(HD)など新たな株主は、ビール事業の再建をその手腕に託す。
同日の株主総会後の取締役会で就任を決めた。創業62年のオリオンがトップを外部起用するのは初めて。早瀬氏は11代目社長となる。
早瀬氏はトリンプ・インターナショナル・ジャパンの副社長や米コカ・コーラ日本法人のマーケティング責任者を歴任。消費者向け商品の販売やブランディングで豊富な経験を持つ。
22日、那覇市で会見した早瀬氏は「沖縄の象徴であるオリオンビールは県外や海外でも通じるブランド力がある。第二の創業で、県民に一層愛されるブランドにしていきたい」と述べた。
オリオンは3月にTOB(株式公開買い付け)で野村HDと米投資ファンド、カーライル・グループの傘下に入った。早瀬氏の就任は野村とカーライルから「推薦があった」(宮里政一代表取締役)という。
オリオンの業績は低迷している。2019年3月期単独決算は売上高が前の期比2%減の257億円、営業利益は10%減の25億円と減収減益。主力のビールは県内向けの出荷が全体の約8割を占め、足元は伸び悩んでいる。早瀬氏は「まずは沖縄でのシェア回復が最優先課題」と話した。
新たな経営計画を「今後100日をメドに打ち出したい」とし、「勝つべきところ、守るべきところ、新たにチャレンジすべきところといった観点から、最適な事業ポートフォリオを考えたい」と述べた。
一例として、吹田龍平太最高マーケティング責任者(CMO)は「ビール市場が縮小する中でも高付加価値なクラフトビールは伸びている。同分野は大手は苦手なので、成長余地がある」と指摘する。
オリオンは6月に野村とカーライルが主導する新体制に移行。前社長の与那嶺清氏が代表権のない副会長に就任、取締役11人のうち6人を野村とカーライルから起用した。早瀬氏の就任でオリオン以外の取締役は12人中8人になる。
「先にのどを潤わさせて頂きます」。早瀬氏は会見の冒頭、卓上のビール瓶に手を伸ばした。「おいしい。やっぱりオリオンはみんなを幸せにする特別なブランドだ」。ノンアルコールだが、好きな物を飲みながら会見に臨みたいとの考えから、急きょ会場に用意した。
福岡市出身。九州大学経済学部を卒業後、外資系企業でマーケティング畑を歩んできた。2年前からルルレモン・アスレティカ日本法人社長に。将来は「地域に根ざした活動がしたい」と考えていた時、今回の話が舞い込んだ。
沖縄は出張で訪れたことがある程度。だが沖縄から帰ってきた同僚たちがみな幸せそうな顔をしていたのが印象に残っており「迷わずチャレンジすることにした」。
「県外出身者だからこそ気づく魅力がある」と繰り返す。例に挙げたのがコカ・コーラ。「飲料メーカーでTシャツなどにロゴが使われるのはコカ・コーラ以外にオリオンしかない」とし、沖縄ブランドに磨きをかける。
座右の銘は「Can do」。不可能と言われる仕事ほど燃えるという。オリオンの創業者、具志堅宗精氏の口癖「なにくそ、やるぞ」と同じ意味だとも説明。「オリオンのDNAは変わらない。(野村とカーライル傘下での)『第二の創業』で創業者の思いをどう現代風にしていくのかが私の使命だ」と強調した。(佐藤一之、酒井恒平)