憲法改正、首相「自民案とらわれず」 合意形成へ努力
安倍晋三首相(自民党総裁)は22日、参院選の結果を受けて党本部で記者会見した。憲法改正に前向きな「改憲勢力」が3分の2を割ったことを踏まえ「与野党の枠を超えて3分の2の賛同が得られる案を練り上げたい。自民案だけにとらわれず柔軟に議論する」と述べた。経済政策に関しては、景気の下振れには財政出動で対応する考えを示した。
参院選の結果、自民、公明両党と日本維新の会をあわせた改憲勢力は160議席にとどまった。国会発議には3分の2にあたる164議席以上が必要で、野党の協力が不可欠となった。野党を巻き込んで改憲勢力3分の2以上の形成を目指す。
首相は参院選で改憲議論の進展を再三にわたって訴えたことに触れ「少なくとも議論はすべきだというのが国民の審判だ」と強調した。
自民は(1)憲法9条への自衛隊明記(2)緊急事態条項(3)参院選の「合区」解消(4)教育充実――の4項目からなる党改憲案をまとめている。首相は3分の2以上の賛同を得るには自民案の修正も排除しない姿勢を示した。
秋の臨時国会で憲法審査会を開き、野党の対応を探る。野党との協力に関し「新たに登場した政党や無所属議員、国民民主党には憲法改正を議論すべきだと考える方もたくさんいる」と語った。
世界経済の先行きには不透明感が増している。10月の消費税増税に伴う景気の下振れリスクへの対応では「ちゅうちょすることなく、機動的かつ万全の対策を講じる」と述べ、財政出動を実施する考えを表明した。経済の下支えもにらみ、年内に経済対策を講じる。
「最大の課題は少子高齢化への対応だ」と語り、政権が掲げる全世代型社会保障を推進する考えを示した。社会保障の支え手を増やすため、高齢者が働きやすい環境も整えていく。
一定以上の収入があると年金額を減らされるため、高齢者の働く意欲をそぐとの指摘がある在職老齢年金の制度は「あり方を見直す」と明言した。来年の通常国会に関連法案を提出する。
参院選後初の臨時国会を8月1日に召集し、参院の正副議長の選出や常任委員長の人事など院の構成を決める。
内閣改造・党役員人事については「8月、9月と外交日程が立て込んでいる。そういう中でよく考えていきたい」と述べた。麻生太郎副総理・財務相や菅義偉官房長官、二階俊博幹事長ら内閣と党の骨格を維持するのかとの問いには「全く白紙だ」と答えた。
衆院解散は「全く考えていないが、あらゆる選択肢を排除しない」と言及した。21年9月までの党総裁任期の延長による4選は「全く考えていない」と述べた。
政府が輸出先として信頼する「ホワイト国」から韓国を除外する方針を示していることは「対抗措置ではない」と語り、元徴用工訴訟など一連の韓国側の対応とは無関係だとの認識を示した。