与党改選過半数、市場はどうみる
21日投開票の参院選では与党の自民、公明両党が改選過半数の63議席を上回った。憲法改正に前向きな「改憲勢力」は非改選議席とあわせ、国会発議に必要な参院の3分の2を割り込んだ。参院選を受けた相場見通しや焦点について市場関係者に話を聞いた。
<株式>
「想定通りの結果 消費刺激策の緩みに注意」
市川雅浩・三井住友DSアセットマネジメント・シニアストラテジスト
21日投開票された参院選で与党が改選過半数を握る見通しとなったが、市場の想定通りだった。安倍政権の基盤安定を確認でき、きょうの相場に大きな混乱はないだろう。10月の消費増税も確実となったが、これにも驚きはない。
ただ今回与党にとって余裕ある選挙結果だったことが、中長期的には相場にマイナスに響く可能性もある。もし辛勝だったなら憲法改正も視野に入れた支持率対策で増税による消費落ち込みの対策に力を入れただろうが、その必要性が後退したためだ。今後、政府の消費刺激策が緩む可能性には注意が必要だ。
政治の焦点は7月末からの米国との貿易交渉本格化となる。日本は防衛関連品や農作物などの輸入拡大を迫られるだろうが、トランプ米大統領としても2020年の選挙前に一定の成果を引き出せればよく、為替条項など踏み込んだ交渉にはならないのではないか。
「政権安定は好材料 日米交渉で自動車に思惑」
檜和田浩昭・東洋証券投資調査部長
21日投開票の参院選は与党の自民、公明両党が改選過半数の63議席は上回ったが、憲法改正の国会発議に必要な3分の2には届かなかった。過半数確保は政権の安定性を継続でき好材料だ。とはいえ結果は事前想定に近く、株価への影響は限定的だろう。
今後、政治面での注目は日米貿易交渉となる。トランプ米大統領は参院選に配慮してか日米交渉に関し「8月に発表がある」と言及した。自動車株などについては思惑が高まり神経質な場面も予想される。
22日の東京市場の関心事は、米国の金融政策だ。先週末、米連邦準備理事会(FRB)による早期の大幅利下げの期待が後退し米国株が下落したことで、日本株も売り先行となる可能性が高い。ただ、米経済自体は堅調で大幅利下げの必要性は薄く、失望感は大きくない。企業の決算発表本格化を前に、売り一巡後は様子見感を強めそうだ。日経平均株価の下値メドは19日終値(2万1466円)比100円ほど安い2万1350円近辺とみる。
<為替>
「焦点は英保守党首選とユーロ圏金融政策へ」
石月幸雄・大和証券シニア為替ストラテジスト
21日に投開票された参院選は自民・公明の与党が改選議席の過半数を獲得する想定通りの結果だった。もともと過半数を割り込むシナリオは見込まれていなかったうえ、参院選自体の注目度も低かった。市場の反応が乏しいことに特段意外感はない。
今週は英国の保守党党首選の結果と欧州中央銀行(ECB)理事会に関心が高い。23日には英国で次の首相が決まる見通しだが、市場ではほぼボリス・ジョンソン氏の就任を織り込んでいる。欧州連合(EU)からの合意なき離脱も辞さないジョンソン首相の誕生を念頭に、ポンドの売り持ち高は相当積み上がっている。ジョンソン氏で正式に決まればポンドには「事実で買い」でいったん買い戻しが入り、対ポンドでの円安が対ドルでの円売りにつながるだろう。
一方、25日のECB理事会は円高要因になるかもしれない。金融政策の変更は想定していないが、ドラギ総裁が記者会見で9月の理事会に向けた緩和の姿勢を打ち出してくるだろう。ユーロ安は長期化しそうで、円高・ユーロ安の流れが対ドルでの円買いを促し、1ドル=107円台前半まで円高・ドル安が進んでおかしくない。
〔日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥、菊池亜矢、井口耕佑〕
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