福島県いわき市 バッテリーバレー狙う 水素や発電関連に期待
地方創生 気になる現場
福島県いわき市をバッテリー(蓄電池)産業の集積地にする活動が民間主導で広がっている。地域を長年支えてきた重工業が成熟するなか、エコカーや通信機器などに幅広く使われるバッテリーに関連した産業を新しいけん引役に育てる。
水素で走り、二酸化炭素を排出しない燃料電池車。全国で3千台強しかないといわれる「究極のエコカー」がいわき市で増え始めている。
いわき商工会議所によると市内の燃料電池車の数は現在20台強。納車待ちの車の引き渡しが進み2020年春には40台前後になる見通しという。「今後メーカーの生産体制が整うため、10年以内に1200台程度に増える」(商工会議所役員)との見方も出ている。
燃料電池車が増えるきっかけになったのは、東北で2番目の水素ステーションが3月にできたことだ。ガソリンスタンド運営の根本通商(いわき市)が開設した。
この事業はトヨタ自動車などが水素スタンド普及のために設立した日本水素ステーションネットワーク(略称ジェイハイム)の整備協力の第1号になった。
各地が誘致を競うなか地元企業で構成する「いわきバッテリーバレー推進機構」(庄司秀樹代表理事)を中心に、地域をあげて誘致に取り組んだ成果が出た。
いわき市中心部から30キロほど北の福島県浪江町では、国が主導して世界最大級の水素工場の建設工事が進む。いわき市で燃料電池車が普及すれば、水素工場との相乗効果が期待できるとの読みが関係者にはある。
いわき市は小惑星探査機「はやぶさ」のバッテリーを手掛けた古河電池をはじめ、電池の性能評価最大手の東洋システム、電極材料のクレハ、非鉄の小名浜製錬などバッテリー関連の企業が多く立地する。推進機構ができたのは15年で、クラスター(産業集積)づくりは始まったばかりだ。
福島県は東日本大震災と原子力発電所事故からの復興のため再生可能エネルギーの普及に力を入れている。太陽光や風力発電の電気をためるバッテリーの開発や生産の拠点ができる期待がある。
いわき市が南端に位置する「浜通り地区」は原発事故や津波で大きな被害を受けた地域だ。国や県の復興支援策を利用した企業進出が活発で、エネルギーやバッテリー関連の企業も多い。
日産自動車系列のフォーアールエナジー(横浜市)は浪江町で電気自動車のバッテリーを再生する工場を稼働し、豊田通商は楢葉町で国内最大級のリチウムイオン電池原料の工場に着工した。
こうした動きとの連携がバッテリーバレーづくりのカギのひとつになりそうだ。
(郡山支局長 村田和彦)