色彩と配置 際立つ画力(展覧会評)
横山華山展
生前には人気があったが、忘れられてしまった絵師は多い。江戸時代後期に活躍した横山華山もその一人である。しかし、華山が実力ある絵師だったことは間違いない。
華山が文政9年(1826年)に描いた「唐子図屏風」を見てみる。ここには喧嘩(けんか)したり、生き物に興味を示したりする子どもたちが描かれている。賑(にぎ)やかな声が聞こえてきそうな画面だ。よく見ると、子どもたちは鮮やかな彩色で明瞭に描かれ、そこには陰影も施されている。そして、その背景は広い金地である。
この屏風が印象的なのは、子どもたちを描く彩色が、背景の金地の中で映えているからである。金地の上には松や岩、水辺の様子が描かれているが、それらの彩色は極力抑制されている。これは子どもたちだけを特に際立たせるための工夫である。つまり、この屏風では色彩と金地のバランスが絶妙なのである。
江戸時代末、この屏風は自然光もしくは蝋燭(ろうそく)の光のもとで見られたはずである。その場合、金地に反射する光量が常に変化する。そして、それに伴って屏風の見え方も変わってくる。華山はこんな計算もできる絵師だったのである。
この「唐子図屏風」は大丸社長を務めた下村正太郎の所蔵だった。その後はアメリカに渡り、近年日本に里帰りした。華山が日本で忘れられてしまった理由の一つは、その優品の多くが海外に渡ってしまったからだという分析がある。華山は日本より先に外国で評価された絵師だったのである。
そんな横山華山を系統立てて初めて日本で紹介する展覧会「横山華山」が京都文化博物館で開催中。8月17日まで。
(大阪芸術大学教授 五十嵐公一)
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