エース級「軽」実用で競う ホンダが新型「N-WGN」
ホンダは18日、軽自動車「N-WGN(エヌワゴン)」を全面改良して8月9日に発売すると発表した。かつては「セカンドカー」と位置づけられ、登録車(排気量660cc超)と比べて軽んじられていた「軽」。いまや完成車メーカーがしのぎを削る主戦場。2019年に入って、各社が最新技術を惜しみなく搭載したエース級の「軽」を相次ぎ投入する。
ホンダは2年連続で新車販売トップの「N-BOX」の勢いを生かし、エヌワゴンでも攻勢をかける。エヌワゴンは17、18年の新車販売トップだったN-BOXが属する「スーパーハイトワゴン」より少し小さい「ハイトワゴン」の位置づけ。スズキの主力車「ワゴンR」などが競合となる。
「ニューシンプル」。ホンダの日本本部長を務める寺谷公良執行役員はエヌワゴンの特徴をそう表現する。その通り、デザインは親しみやすいシンプルさにこだわった。
重視したのは実用性につきる。ハイトワゴンの購入層は独身者に加えて、子育てを終えたシニアが大半を占める。そこでトランクを上下2段に分けて荷物を収容しやすくした。
全グレードに標準装備する安全運転支援システム「ホンダセンシング」はN-BOX以上に充実させた。交通事故が夜間に多発していることを踏まえ、ヘッドランプと連動して、街灯がない暗い道でも横断する歩行者を検知して衝突を防ぎやすくした。
社会問題となっているアクセルとブレーキの踏み間違い防止機能もN-BOXと同様に付けた。希望小売価格は127万4400円から。
19年は軽は新型車の投入ラッシュだ。日産自動車、三菱自動車は3月、「デイズ」「eKワゴン」をそれぞれ発売。ダイハツ工業も今月、新たな開発・製造手法を採用した「タント」を発売した。
登録車に負けず劣らずの機能を持たせる。消費者側も、かつてはあった黄色ナンバーへのコンプレックスも薄れ、使い勝手の良さから愛車として購入する。
軽マーケットも活況に沸く。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会によれば19年上半期(1~6月)の軽販売は前年同期比1.8%増の101万8071台と3年連続でプラス。国内の新車全体の37%を占めるほど、ディーラー経営にとっての比重は大きい。
ホンダの軽販売は、17年の全面改良の勢いが続くN-BOXがけん引する。19年上半期は7.1%増の19万9954台だった。すでに新車販売全体のほぼ半分を軽が占め、市場シェアも19.9%を獲得した。
軽といえば、ダイハツ、スズキが激しく争うSD戦争が繰り広げられてきた。N-BOXの快進撃で、ホンダは2位のスズキ(27.9%)の背中が見えつつある。
エヌワゴンの月間販売目標は7000台。ホンダにとって、N-BOX以外の車種の底上げが課題である。エヌワゴンがその車格に似合わず、背負う責任は重大だ。
エヌワゴンは当初、今月19日の発売予定だったはずが、部品供給の遅れから8月に先延ばしした。発売間際になっての延期は異例。寺谷本部長は「納車を一日でも早くすべく挽回に向けた体制を整えている」と述べた。出ばなをくじかれたスタート。もっとも、消費増税を控えるなかで、「売れるクルマ」であるはずの看板車の商況が注目される。(古川慶一)