住商、CATV向け5G技術の実証実験を都内で公開
住友商事は18日、傘下のケーブルテレビ(CATV)会社の本社(東京・練馬)で、次世代通信規格「5G」を特定エリアで使う通信技術の実証実験を公開した。実証は、小型の5G基地局を使いエリアを区切って高速通信する「ローカル5G」技術を検証する。CATVではケーブルの幹線網から契約者の住宅につなぐ有線の代わりに置き換わる可能性がある。
「世界で注目される先端技術の1丁目1番地が5Gだ。今回の実験はその中で象徴的な意味がある」。住商の南部智一専務執行役員は見学会に出席した官公庁職員や取引先の前で、実証の意義をこう強調した。
ローカル5G技術は遠隔医療や工場などでも活用が見込まれる。ただ住商担当者は「まず商用開始にたどり着けるのはCATV分野で有線で引き込んでいた回線を5Gにすることだ。できれば経済性の効果は大きい」と話した。
実証は住商がKDDIと折半出資するJCOMの子会社ジェイコム東京本社とその周辺で25日まで行う。18日の見学会では、建物付近の電柱に設置した約30センチメートルの箱形の5Gの基地局から、室内の受信機に向けて8K放送を伝送する様子を紹介した。
このほか受信機を積んだボックスカーを付近に走らせて距離の違いや電波を遮る住宅の有無による受信状況の違いを説明した。
実証には東京都の小池百合子都知事も視察に訪れた。小池都知事は「ローカル5Gは首都東京にとっても情報のプラットフォームになる。発展の原動力になるのではと楽しみにしている」とあいさつした。
住商は国内で初めてローカル5Gを実証実験するための免許を総務省から取得し、6月下旬から愛媛県などで実証を始めている。8月までに都内のほか神奈川県や長野県など全国6カ所で行う。
住商にとってCATVを含むメディア・デジタル事業部門は他商社にはない強みのある分野。2019年3月期には純利益で475億円を稼いだ。三菱商事や伊藤忠商事がコンビニエンスストアを中心に非資源分野を拡大させるなか、住商はCATVを核に独自路線を打ち出していく。
(大平祐嗣)