AIは人間拡張のツール 三菱総研・比屋根氏に聞く
働き方進化論
人工知能(AI)は自動で様々な作業をこなす「デジタル労働者」として、存在感を持ち始めている。一方で、人間の仕事を奪うとの脅威論が強まってきたのも事実だ。AIには働き方を変える力があるという三菱総合研究所の比屋根一雄AIイノベーション推進室長に、どう向き合うべきか聞いた。
――AIはどんな力を持っているのでしょう。
「作業の自動化や最適化、ノウハウの再現ななど活用領域は広い。事務職のアウトソーシングが進めば、職場にいるホワイトカラー10人のうち9人がいなくなるということも起こりうる。三菱総研の予測では、国内の事務職は現在人手不足だが、AIが普及することによって2022年以降に人材供給が需要を上回り、30年には120万人が過剰になる」
――職場にAIが入ってくる利点についてはどう考えられますか。
「企業のなかで私たちが何かを決めるとき、判断材料になるような多くの情報を集め、資料を作る。AIを使えば、このプロセスが大幅にスリムになる。上司への説明資料や稟議(りんぎ)書などをAIが代わりにつくるからだ。とくに決定のための資料づくりの仕事が多い金融機関や自治体はAIの導入効果が大きい。その結果、職場にいる人の生産性は飛躍的に向上する」
――AIにできないこともあります。
「私たちにとって何が課題なのかをAIが設定することはできない。部下の課題を設定する中間管理職や、商品販売の全体戦略を立案するマーケティング担当者といった高度なホワイトカラーは引き続き必要になる」
「企業にとって重要なのは、AIを人間の能力拡張のツールとして位置づけることだ。オフィスワーカーにはAIを使って何ができるかを考えることが求められる。日々の仕事にクリエーティブに取り組み、常に改善に取り組んでいくという意欲が欠かせない」
(松井基一)
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