台湾総統選、鴻海の郭台銘氏敗れる 野党予備選
韓国瑜・高雄市長に及ばず
【台北=伊原健作】台湾で約半年後に迫る次期総統選を巡り、対中融和路線の最大野党、国民党は15日、党公認候補者を決める予備選で韓国瑜・高雄市長(62)が勝利したと発表した。鴻海(ホンハイ)精密工業の郭台銘(テリー・ゴウ)前董事長(68)は追い上げが及ばず、敗北した。
予備選は一般市民を対象にした電話世論調査で8~14日に行われ、複数パターンで党内外との比較に基づく支持率を調べた。計5人が出馬したが、人気の高い韓・郭氏の事実上の一騎打ちとなった。民間世論調査では先行する韓氏を郭氏が猛追していたが、結果は韓氏の44.8%に対し、郭氏が27.73%と大差がついた。28日の党大会で韓氏を公認候補として正式に決定する見通しだ。
郭氏は鴻海を一代で世界最大の電子機器の受託製造サービス(EMS)に育てた世界的経営者で、4月に出馬を表明し注目を集めた。「経済で韓国を追い越す」などと主張したが、資金力を武器にテレビ広告を連発する手法が一般庶民に「金持ち」との反感を買ったとの見方も出ていた。
韓氏は元青果市場経営の経歴を持ち、「庶民総統」を自称し経済格差の拡大に不満を持つ一般市民から熱狂的な支持を集めた。ネット上の支持者からは韓氏が公認候補者でなければ本選で国民党に投票しないとの態度表明が相次ぎ、国民党支持者の間で韓氏を公認候補に立てた方が本選で有利との判断が働いた可能性がある。
郭氏が離党し、独自で出馬を目指す可能性があるとの見方も浮上している。国民党はこの日、党の団結を演出するため候補者5人全員に会見への出席を要請したが、党の予備選運営を「不透明」などと批判していた郭氏は欠席した。
郭氏が離党し国民党が分裂すれば、本選で独立志向の与党・民主進歩党(民進党)から再選を目指し出馬する蔡英文総統(62)に有利になる。郭氏は15日午後にも予備選結果を受け声明を出す見通しで、敗北を受け入れるかどうかが注目される。