日韓対立「外交で解決を」 韓国経済団体が緊急調査
【ソウル=鈴木壮太郎】韓国政府が日本政府との関係改善に乗り出すべきだとの声が韓国財界から上がっている。全国経済人連合会が14日に発表した緊急調査で、韓国政府が取り組むべきは「外交的な対話」だとする回答が48%と最も多かった。世界貿易機関(WTO)への提訴検討など強硬姿勢を崩さない韓国政府との温度差がにじむ。
日本政府が4日から半導体・ディスプレー材料3品目の輸出規制を強化したことを受け、全経連が日本との取引がある企業人や証券アナリスト、通商専門家50人に聞き取り調査した。
韓国政府が取るべき対応として次に多かったのが日本メーカーに依存する「部品の国産化」で30%。韓国政府が検討する「WTO提訴」との回答は10%にとどまった。
日韓は部品・素材を日本が供給し、韓国が完成品をつくる水平分業関係にある。輸出手続きの厳格化で仮に日本からの対韓輸出が滞った場合、影響は日韓双方の企業に及ぶが、調査では62%が「韓国の被害がより大きい」と答えた。
グローバルな供給体制への悪影響は避けたい日本が21日投開票の参院選の終了後、輸出規制を緩和するとの楽観的な観測も一時浮上したが、調査では70%が「影響は参院選後も続く」と回答した。
韓国は国際世論の味方づくりに奔走している。康京和(カン・ギョンファ)外相は10日、ポンペオ米国務長官との電話協議で日本の輸出規制強化についての懸念を伝達。韓国大統領府で外交政策を担う金鉉宗(キム・ヒョンジョン)国家安保室第2次長もワシントンを訪問し不当性を訴えた。
14日帰国した金氏は取材団に「米国の関係者は例外なく我々の立場に共感した」と語った。韓国メディアは野党議員と非公式に会談したハリス駐韓米大使が「いまは米国が介入するときではない」と発言したと報じている。聯合ニュースによると金氏はこの発言について「私がワシントンで聞いた話とは温度差がある」と語った。
文在寅(ムン・ジェイン)大統領も10日の財閥首脳との懇談会で日本に措置の撤回を求め、企業には日本に依存する部品・素材の輸入先の多角化や国産化を要請した。
ただ「脱日本依存」は簡単ではない。12日にはロシアが半導体のウエハー洗浄に使うフッ化水素を日本に代わり供給すると報じられたが、サムスン電子は「半導体の製造工程で使えるかの検証には時間がかかる」との認識を示した。
韓国政府の現在の取り組みでは危機の克服は難しい。経済界が望むのは日韓関係の早期修復だ。文氏と財閥との会合では「長期化すれば日韓ともに経済的損失が大きい。短期解決へ政府が外交努力を」との意見が複数のトップから提起された。
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