対韓輸出規制、WTO理事会で議論へ
【ジュネーブ=細川倫太郎】世界貿易機関(WTO)はスイス・ジュネーブの本部で23~24日に開く一般理事会で、日本の韓国に対する半導体材料の輸出規制を議論することを決めた。韓国が議題にすることを要請し、認められた。日韓の主張は平行線をたどったままで、解決の糸口になるかは不透明だ。
一般理事会はWTOに加盟する全164カ国・地域の大使級が参加する。2年に1度の閣僚級の会合を除くと、実質的な最高機関になる。韓国は白芝娥(ペク・ジア)駐ジュネーブ国際機関代表部大使が演説する見通し。日本に規制強化の根拠をただし、措置の撤回を主張するとみられる。一方、日本は安全保障のための輸出管理制度の適切な運用などとして、これまで通り正当性を訴えるとみられる。
WTOでは一般理事会の下部機関にあたる物品貿易理事会でも9日、日韓が意見を表明した。その後の12日に東京都内で開いた日韓の事務レベル会合では双方の意見の溝は大きく、今回の一般理事会で事態が進展することは想定しにくい。あくまで国際世論の「賛同獲得合戦の場になる」(通商筋)との見方は多い。
一般理事会では米国や欧州連合(EU)など第三国・地域が発言できる機会もある。韓国はWTOでの議論を通じて国際社会を巻き込み、問題の解決を急ぎたい思惑がある。10日には康京和(カン・ギョンファ)外相が米国のポンペオ国務長官と電話会談し、輸出規制の強化は米企業や世界経済全体に悪影響を及ぼすとの懸念を伝えた。
韓国はWTOのルール違反にあたるとして、日本を提訴する検討をしている。仮に提訴となれば、WTOではまず2カ国間で協議をする。ここで解決できなければ、第一審にあたる紛争処理小委員会(パネル)の審理に入る。
WTOでは米中の貿易戦争などで紛争案件が増加している一方、裁判官の人数が不足している。このため最終的な判断が出るには1年以上かかる可能性が高い。