多様性の時代 「暗黙の了解通じない」
総務省によると2019年1月1日時点で外国人の数は前年比7%増の約266万7千人となり、過去最多だった。今後も外国人の増加が見込まれるなか、企業はどう受け入れ体制を整えるべきか。リクルートワークス研究所の中村天江主任研究員に聞いた。
――職場で外国人を受け入れる際にどのような点が課題となりますか。
「年功序列型の賃金や昇格制度など、旧来型の強固な日本的雇用は外国人の理想とするキャリアパスと合致せずミスマッチが起こりがちだ。報酬に関する価値観も違い、より給与の高い職場に引き抜かれる事例も多い。さらに言葉の問題で役員以上に上がれない『ガラスの天井』問題もある」
「リクルートワークス研究所が、働く上で重視する点を各国の従業員に聞いたところ、米国や中国など13カ国はいずれもトップが賃金で、ほかに明確なキャリアパスなどが上位にきた。一方、日本は職場の人間関係がトップで、意識のずれは明確だった。働くことに関するもともとの感覚が違う」
――能力のある外国人に活躍してもらうためにどのような環境を整えればいいでしょうか。
「お互いが何を双方に期待しているか、しっかりと擦り合わせることが重要だ。特に大企業の場合、外国企業に比べ、出世スピードで見劣りすることが多い。初任給などの賃金を外国人で優秀だからと上げることは難しいが、本人を生かせるキャリアを柔軟に用意することや、休日も含め日本の生活を満喫できるよう生活支援を充実するなどのきめ細かい対応が効果的だ」
「加えて日本の労使でありがちな社員の今後の身の振り方に関する暗黙の了解は通じない。3年後にどのように成長していたいか、どのようなポジションにいたいか、賃金はどうしたいかを具体的に共有し言語化しておくべきだ。こういった取り組みは今後日本企業でフリーランスや副業、職務や勤務地が限定されたジョブ型雇用が増えるなか、社員の国籍にかかわらず企業としての対応が必要となるだろう」
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