ペット販売、少し待って 犬猫は生後8週まで禁止へ
ペットショップなどでの犬や猫の販売を生後56日(8週間)まで原則禁止する改正動物愛護法が6月成立した。幼いほど衝動買いを誘い、飼い主による遺棄につながりやすいためで、改正前から1週間延ばした。2年以内に施行される。ペット業界は規制強化に反対だったが、施行を待たずに自主的に新ルールに切り替える業者も出てきている。
東京都の女性会社員(38)は2年前、子犬を飼おうとペットショップを見て回った。愛くるしさに心が癒やされ、欲しい気持ちにかられたが、ショーケースに1匹で過ごす姿に不安が募った。「本来なら犬同士で過ごし、力加減を覚える大事な時期。ちゃんと社会性は身についているのか」
結局、インターネットで知った岡山県のブリーダーから雌の柴犬(しばいぬ)を購入した。自身はマンションでひとり暮らし。不在時は友人やペットシッターに世話を頼む可能性もある。親犬と長く一緒にいた方が成長後の問題行動が少なくなると聞き、生後12週になってから引き取りに行った。
欧米では生後8週まで親元で育てるよう法令で制度化している国が多い。一方、犬舎の狭い日本の飼育環境では、成長に伴い子犬が母犬を傷つけるトラブルが起こりやすく、生後30日前後で母犬から離すのが一般的だ。幼い方がかわいさから売れやすい上、飼育コストを抑えられるという販売者側の都合もある。
だが、早い時期に親から離された犬は「かみ癖がつく」「すれ違う犬にほえ続ける」といった問題を起こす恐れが指摘されている。飼い主が飼育を放棄し、最悪の場合は殺処分に至ることもあるため、規制強化を求める声が動物愛護団体を中心に強まっていた。
ペットショップも変わりつつある。首都圏で店舗展開するペット販売大手コジマ(東京)は今年1月、子犬や子猫の販売について、8週を超えてからの引き渡しを推奨するとの見解を公表、7週ルールに一石を投じた。
コジマによると、7週では、社会に順応できなかったり、発育が遅れていたりする犬や猫が一定数いるという。母乳由来の抗体が減り始めて免疫的に不安定な時期でもあり、8週までは店舗で世話をし、その後に様子を見ながら引き渡すのが妥当と判断したという。
川畑剛社長は「飼い主の意識も年々高まっており、見た目のかわいさで衝動買いする時代ではない。できる範囲で社会化し、問題のない状態で渡すことが販売者責任と考えている」と話す。
〔共同〕