高速タックル、女子初の3連覇 2012年ロンドン五輪
大舞台で絶対女王の強さがよみがえった。2012年ロンドン五輪。3カ月前のワールドカップで4年ぶりの敗戦を喫し、不安をささやかれていたレスリング女子55キロ級の吉田沙保里は決勝に駒を進めた。長年しのぎを削ってきたカナダのバービークに代名詞の高速タックルを浴びせて2-0の完封劇。一瞬の隙を突いた円熟の攻めで同大会での伊調馨とともに日本女子初の五輪3連覇を果たし、セコンドに就いた父の故・栄勝さんを肩車で担ぎ上げた。
直後の世界選手権で10連覇し、男女通じて史上初の13大会連続世界一を達成。16年リオデジャネイロ五輪は決勝で敗れ4連覇はならなかったものの、よく笑い、よく泣く人情味あふれるキャラクターも愛された、競技の枠を超えたスターだった。今年1月に引退を表明。女子レスリングは一つの時代の区切りを迎えたが、大学の後輩に当たる同じ階級の向田真優らが東京五輪の優勝候補に挙がり、その強さは次代に脈々と引き継がれている。