金正恩氏「国家を代表」 北朝鮮、改憲で権威強化
【ソウル=恩地洋介】北朝鮮が運営するウェブサイト「ネナラ(わが国)」は11日までに、4月の最高人民会議(国会に相当)で決定した改正憲法の全文を掲載した。金正恩(キム・ジョンウン)委員長が再任された国務委員長のポストを「最高指導者」から「国家を代表する最高指導者」と修正した。朝鮮人民軍が金正恩指導部を守る組織であることを明示するなど、権威強化を図った。
従来の北朝鮮憲法は外交権限の位置づけが曖昧だった。最高人民会議常任委員長の職務を「国家を代表し、他国の使臣の信任状、召喚状を受理する」と定めるだけだったが、今回の改憲で金正恩氏が名実ともに「国家代表」であることを明確にした。
金正恩氏の直属で国家主権の最高政策指導機関と位置づけてきた国務委員会は「国家の重要政策を討議、決定する」と定めた。従来表記していた「国防建設事業をはじめ」という言葉は削除した。国務委員会があらゆる政策の上位機関であることを明示する狙いとみられる。
国防に関する条文では、武装力の使命を「金正恩同志を首班とする党中央委員会を決死擁護する」と定めた。従来は「革命の首脳部を保衛」と表現していた。金正恩氏の名前を書き加えることで、軍の忠誠を高める狙いがありそうだ。
一連の憲法改正からは、権力集中を一段と強めようとする金正恩氏の狙いが浮かぶ。米国との対話や経済政策を、自ら主導して展開する体制を整えた。金正恩氏は改憲を通じ、父の故金正日総書記が掲げた軍事優先の「先軍政治」からの脱却を段階的に進めてきた。2016年の改憲では国防委員会を国務委員会に改編している。
もっとも、核に関する表現には手をつけなかった。12年の改憲で、序文には金正日総書記の業績として「祖国を核保有国、無敵の軍事強国にした」と明記されている。
金正恩(キム・ジョンウン)総書記のもと、ミサイル発射や核開発などをすすめる北朝鮮。日本・アメリカ・韓国との対立など北朝鮮問題に関する最新のニュースをお届けします。