順天堂大 認知症の早期発見 企業6社と共同研究
順天堂大学は10日、認知症の早期発見や予防などを目指した企業との共同研究に着手すると発表した。キリンホールディングス(HD)や三菱UFJリース、グローリー、日本生命、三菱UFJ信託銀行、日本IBMの6社と取り組む。期間は3年間で、実用的な診断システムの実現や、予防につながるような知見の発表を目指す。
研究ではまず、認知症の発症リスクが高いとされるパーキンソン病の患者を対象として、認知症への移行を早期に突き止めたり、進行を遅らせたりする手法の実現を目指す。診療の際の医師と患者の会話や、日常生活における顔の表情の特徴を手掛かりに病気の進行度合いを調べる診断システムを開発する。ビールに含まれる苦み成分などをはじめ、これまでに認知機能の改善効果について報告がある食品中の成分についてパーキンソン病の患者を対象とした臨床試験も実施する。
将来的には広く一般の人を対象として、日常生活の中で会話や顔の特徴から認知症の傾向を早期につかむソフトウエアの実現や、認知症の予防につながる生活習慣の啓発などにつなげたい考えだ。
順天堂大学は4000人のパーキンソン病患者を診療するなど、脳に関する神経疾患の診療実績に強みを持つ。同日開いた会見で、順天堂大の服部信孝教授は、様々な業種の企業と取り組むことで「病院の診療だけでなく、日常生活の中でデータを取ることで早期の発見につながる」と共同研究の狙いを話した。
パーキンソン病や認知症は加齢とともに発症率が増加。高齢化社会の進行とともに国内の患者数も増える傾向にある。特に認知症は2025年に患者数が約700万人に達するとみられており、6月中旬には政府が認知症対策の新たな大綱を関係閣僚会議で決定した。新たな大綱は認知症の発症や進行を遅らせる「予防」や、認知症の患者が暮らしやすい社会をつくる「共生」に重点を置いている。