「宇宙はビジネスの場に」 宇宙関連企業がイベント
宇宙ビジネスを手がける国内外のスタートアップ企業などが集まるイベント「スペースタイド2019」が9日、都内で開かれた。スタートアップ経営者に加えて宇宙機関の関係者も登壇し、国内外で企業の新規参入が相次ぐ宇宙利用の現状を議論した。参加した各社は月探査や航空機からの衛星打ち上げなど、大胆な事業構想の実現が近づいていることをアピールしていた。
イベントは一般社団法人SPACETIDE(東京・中央、石田真康代表理事)が主催した。今回が4回目で、国内外から約700人が参加した。A・T・カーニーで宇宙分野の戦略立案などを手がける石田氏は「先端技術の活用や資金の流入が続き、日本でも宇宙が現実のビジネスの場になった」と強調した。
イベントの冒頭では米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が設立した米ブルーオリジンのセールスディレクター、アリアン・コーネル氏が登壇した。高度100キロメートル付近を飛行する実験ロケット「ニューシェパード」や衛星打ち上げ用のロケット「ニューグレン」、5月に公開した有人月面着陸機「ブルームーン」など今後の構想を次々に紹介した。
ニューシェパードは2019年内にも有人飛行を目指している。開発中のニューグレンも、すでにスカパーJSATなどから衛星の打ち上げを受注している。コーネル氏は「ニューシェパードの設計を生かし、大きな構想に一歩ずつ前進している」と強調した。
飛行中の航空機から人工衛星を打ち上げるビジネスを手がける米ヴァージン・オービットはANAホールディングス(HD)との提携を発表している。19年にも商用の衛星打ち上げを始める方針だ。ヴァージン・オービット幹部のモニカ・ヤン氏は「航空機では地上よりも柔軟な打ち上げができる。22年に日本でも打ち上げサービスを始め、衛星スタートアップの需要を取り込む」と話した。
ロケットの打ち上げに参入するスタートアップは日本でも登場している。キヤノン電子やIHIなどが設立した小型ロケット開発のスペースワン(東京・港)は和歌山県串本町に民営の発射場を建設する計画だ。同社の阿部耕三取締役は「様々な軌道に衛星を運べる発射場になる。世界で最も高頻度に打ち上げるサービスを目指す」と述べた。
米国や中国は国家事業として月探査に力を注いでいるが、同時にビジネスの場としての月にも注目が集まっている。月探査のispace(アイスペース、東京・港)の袴田武史CEOは「将来の火星探査などでは中継拠点が必要だ。水資源もある月へ進出することは理にかなっている」と説明した。
宇宙飛行士で宇宙航空研究開発機構(JAXA)理事の若田光一氏は月面探査車の開発で協業を検討しているトヨタ自動車の例を挙げて「幅広い産業の企業の参画を期待している」と述べた。
20日には米国がアポロ11号が月面に着陸してから50年を迎える。宇宙への関心は高まりそうだが、宇宙ビジネスのリスクが大きいことには変わりない。より多くの起業家や投資家を引き付けるには、各社が足元の事業を着実に進め、自社への信頼性を高めることが重要だ。
(山田遼太郎)
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