20年度の英語民間試験 総合型選抜、受験夏までに
2020年度から大学入試センター試験に代わって始まる大学入学共通テストで、英語の民間試験が導入される。「読む・聞く・書く・話す」の4技能が試されるが、選抜方法によっては受験する期間が限られるなど、仕組みは複雑だ。受験生や高校は積極的に情報を集め、早めに計画を立てる必要がある。ポイントや注意点をまとめた。
共通テストの初回は21年1月16日、17日で、英語はマークシート方式で「読む・聞く」を問う。4技能全てを試す民間試験は、20年4~12月の間に2回まで受験できる。
認定された民間試験は6団体7種類。各試験の成績は語学力の共通の物差しである欧州言語共通参照枠(CEFR)に当てはめ、ランク別で大学に提出される。
受験生が最初にしなければならないのは「共通ID」の取得だ。IDは各受験生に割り振られ、試験実施団体から大学入試センターへの成績提供などに使われる。申込書類はセンターのホームページなどで9月2日から入手できる。
現在の高校2年生は高校経由で19年11月1~14日か、20年1月27日~9月10日にIDの発行を申し込む。高3生は高校経由か個人で申し込む。
受験の時期は注意が必要だ。特に20年9月に始まる総合型選抜(現在のAO入試)を目指す生徒は同7月が期限になる。センターから大学への成績提供が時間的に間に合わないためで、11月開始の学校推薦型選抜(現在の推薦入試)組も9月が期限になっている。
一般選抜(現在の一般入試)組は20年12月までに受ければよいが、夏前に1回目を受ける生徒が多いとみられる。文部科学省は6月と10~12月に受験者数が集中すると予測している。試験会場ごとの収容人数などは見通しづらく、混乱が生じる可能性もある。
「GTEC」を運営するベネッセコーポレーションは今秋以降に詳細な実施要項を発表し、年明けから予約を受け付ける。日本英語検定協会も「英検」の予約受け付けを9月に始め、会場などを決めるという。
肝心のテスト対策はどうすればよいのか。センター試験と民間試験の最大の違いは「話す・書く」力を問う点だ。河合塾の英語科講師、守屋佑真さんは「語彙や文法、読解の勉強の際に『話す』『書く』を意識するのが効果的だ」と説く。英文を読んで理解するだけでなく、声に出して読み、書く学習を薦める。
自分の得意・不得意を見極めて試験を選ぶのも手だ。主に中高生向けに開発された「GTEC」、留学目的でアカデミックな題材が多い「TOEFL iBT」など、各試験には特徴がある。コンピューターを使って解答を打ち込んだり、音声を吹き込んだりするCBT方式が多いが、紙の試験や、話す力を対面で試す試験もある。
現実的には試験会場の近さや実施時期で試験を選ぶ生徒が多そうだ。試験会場は実施団体ごとに「10都道府県以上」から「47都道府県」まで幅があり、実施回数もバラバラになっている。実施団体は決定内容を段階的にホームページで公表しており、受験生は情報更新に気を配る必要がある。
各試験の検定料は1回5800~2万5千円程度が予定されている。経済的に苦しい世帯の受験生はID取得時に申告すれば、一部の試験で負担が軽減される。離島やへき地に住む受験生らにも特例があり、19年度の成績を20年度分として使える。しかし、使える成績はCEFRで下から4番目のB2(英検準1級相当)以上という条件があり、ハードルは高い。
大学側、活用の判断分かれる
英語の民間試験を巡っては、英語教育の専門家や高校から「目的が違う複数の試験の成績を比べるのは無理がある」「居住地や家庭の経済状況で受験機会に差が出かねない」といった批判が絶えない。
文部科学省の調査では5月時点で国立大82校のうち4割の35校が民間試験で一定の成績を取ることを出願の条件などとするが、合否判定には使わないとした。東北大など3校は一切使わない。受験機会の公平性への懸念が強い。
一方、39校は「グローバル時代に4技能は重要」などとし、大学入学共通テストのマーク式試験の結果に加点するなどする。私立大は528校のうち、1月時点で利用するのが39%。未定は56%、不使用は4%だった。活用を巡る大学の判断も割れている。
(佐野敦子)