64年五輪を象徴する新幹線 速度より車いすに配慮を
マセソン美季
1964年東京五輪のレガシーの一つである新幹線。現在運行している営業車両の最高速度は時速320キロ。約10年後にはさらに40キロもスピードアップする計画があるそうだ。
海外に住む人たちに、日本で経験してみたいことを聞いてみると、この超特急で旅をしたいと答える人が想像以上に多い。カナダの友人は、新幹線に乗ったのがきっかけで日本の駅弁が大好きになり、10日間の滞在中に25種類を制覇したという。
ただ残念ながら、特に海外在住の車いすユーザーにとって新幹線を利用する旅行は制約を感じることが多い。例えば、千人以上の座席がある新幹線に用意されている車いす対応席(スペース)は数席分のみ。そのスペースがスーツケースやベビーカーでふさがれていることもある。海外で利用者が多いハンドル型車いすは、乗車が認められないケースもある。
しかもこの席を予約するには乗車の2日前までに駅の窓口へ直接出向くか、電話で申し込む必要がある。普通席のようなオンライン予約はできない。数に限りがあるので、早めの予約は必須。海外から国際電話で予約を試みたこともあるが、折り返しの連絡がとれる日本国内の電話番号が必要とのことで、対応してもらえなかった。
また車いす対応席の利用者は在来線などへの乗り継ぎ時間を最低15分確保しなければならないと言われたことがある。乗り継ぎ時間がそれ以下の場合は購入申し込みは受理されず、次の列車を待たなければない、と。
隣のホームへの簡単な移動でも、乗り換え時間15分が必要だという。そのせいで1時間半も余計に待たされたことがあるし、日帰りで行けるところで前泊を余儀なくされ、思わぬ出費がかさんだことすらある。ちなみに、乗り換え時に駅員さんによる手伝いが必要ないと言えば、15分より短い乗り換え時間のチケットを買えるそうだが、その場合、車いす対応席は選べなかった。
スピードアップで目的地に早く着けるのは確かに魅力的。だが、その列車に乗る様々な利用者に配慮した手続きの改善にも心を砕いてもらいたい。
1973年生まれ。大学1年時に交通事故で車いす生活に。98年長野パラリンピックのアイススレッジ・スピードレースで金メダル3個、銀メダル1個を獲得。カナダのアイススレッジホッケー選手と結婚し、カナダ在住。2016年から日本財団パラリンピックサポートセンター勤務。国際パラリンピック委員会(IPC)教育委員も務める。