非核化条件で思惑交錯 米韓高官が協議へ
【ワシントン=永沢毅、ソウル=恩地洋介】米韓両政府は10日、ベルリンで北朝鮮問題を巡る高官協議を開く。先の米朝首脳会談で合意した非核化交渉の再開に向け、対処方針をすりあわせる。北朝鮮に歩み寄りを促すため、米国が従来の姿勢を変化させるのかどうかが注目点だ。米韓は北朝鮮の完全な非核化という最終目標では足並みをそろえるが、その進め方では溝がある。
ブリュッセルを訪れている米国のビーガン北朝鮮担当特別代表が10日にベルリンに移り、韓国の李度勲(イ・ドフン)朝鮮半島平和交渉本部長と話し合う。ビーガン氏は6月30日に開いた3回目の米朝首脳会談の内容を説明し、7月中旬にも再開する米朝間の実務者協議への米政府の交渉方針を伝えるとみられる。
2月末のベトナムでの米朝首脳会談が物別れに終わり、米政府関係者によると米政権内で「完全な非核化と制裁の全面解除を一括合意する『ビッグ・ディール』を追求していると交渉がいつまでも前に進まない」との声が一部であがっている。
ベトナムで北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が非核化措置として提案したのは、核開発の拠点である寧辺(ニョンビョン)の廃棄だけだった。北朝鮮はその後、米国に一方的な譲歩を求め続けている。
米新興メディアのアクシオスは2日、ビーガン氏がオフレコで米メディアに(1)米朝協議中は北朝鮮が核を含む大量破壊兵器の開発計画を凍結する(2)その見返りとして人道支援などの提供を受ける――案が可能だと述べたと報じた。
米紙ニューヨーク・タイムズも、非核化に向けた第1段階の措置として北朝鮮に核開発を凍結させる案が米政権内で浮上していると報じている。3回目の米朝首脳会談の数週間前から同案が検討されていたという。いずれも膠着打開に向けて新たなアプローチを探るべきだとする米政権内の一部の意見を反映したものである可能性がある。
ただ、米国がこれらの案を今後の北朝鮮との協議で実際に伝えるかどうかは不透明だ。トランプ大統領やポンペオ国務長官ら政権中枢でどこまで共通認識が得られているのか見通せない。2月の首脳会談で「ビッグ・ディール」を強硬に主張したボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)はタイムズ紙の報道を直後に否定し、安易な譲歩には反対する。
韓国政府は北朝鮮の立場に理解を示す。文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、寧辺核施設が全面廃棄されれば、南北の経済協力を含む経済制裁の緩和を検討すべきだと主張する。ただ、米朝協議に集中したい北朝鮮は韓国の仲介を拒む。
北朝鮮の核問題を巡る6カ国協議の米朝首席代表は、2007年にベルリンで会談したことがある。ビーガン氏が今回、北朝鮮側と接触するかどうかは不透明だ。