中国、成長再び減速へ エコノミスト調査4~6月6.2%
【香港=木原雄士】日本経済新聞社と日経QUICKニュースがまとめた中国エコノミスト調査によると、中国の4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率の予測平均値は6.2%だった。1~3月期は前の期から横ばいの6.4%だったが、再び減速に転じる見通しだ。米中は6月末に貿易協議の再開で合意したものの、貿易戦争が改善に向かうとの予想は前回調査より減った。
4~6月期の成長率見通しは6.1~6.4%だった。平均の6.2%は四半期の成長率としては統計でさかのぼれる1992年以来、最低となる。
米国は5月に家具や家電など2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に対する制裁関税を10%から25%に引き上げ、華為技術(ファーウェイ)への事実上の禁輸措置も打ち出した。
三井住友DSアセットマネジメントの佐野鉄司氏は「景況感が悪化して、鉱工業生産が下振れした」として、6.2%への減速を予想した。凱基証券の陳浩氏も「加工業や建設、不動産がふるわなかった」とした。
2019年通年の成長率見通しは6.2%と前回3月調査と比べて0.1ポイント低下した。20年6.1%、21年6%と緩やかな減速が続くシナリオは変わっていない。招商証券の謝亜軒氏は「貿易紛争が技術分野にまで及び、年後半にハイテク産業や雇用に悪影響が出る可能性がある」と指摘した。
三菱UFJ銀行の范小晨氏は「18年後半に始まった財政・金融政策が実を結び始めた。6%以上の安定した成長水準を維持する」と分析。Jサフラ・サラシンのデビッド・リーズ氏は「4~6月は金融引き締めの影響が遅れて出るが、積極的な政策対応が下期に方向転換をもたらす」との見通しを示した。
中国政府は19年の成長率目標を6~6.5%と決めており、減速が続けば追加対策を講じるとの見方は多い。工銀国際の程實氏は「地方政府がインフラ建設にあてる債券の発行を増やしたり、自動車などの消費刺激策を導入したりする」と予想した。「財政刺激策は2兆元(約31兆円)から4兆元に倍増する。環境や交通関連の投資が中心になる」(ING銀行の彭藹●=おんなへんに堯=氏)との見方もある。
景気の下振れにつながりかねないリスクを聞いたところ、有効回答15人中12人が「米中貿易協議の結果」を1位にあげた。
光大新鴻基の温傑氏は「貿易交渉は下期の最大の変数だ」という。米中が年末までに一定の合意に達する確率を55%としつつ「交渉が決裂した場合、金融市場が大きく変動し、景気後退が加速する」と警戒感を示した。みずほ銀行の細川美穂子氏は「交渉が長引くほど、見通しに対する不透明感が続き、消費や投資心理の改善が遅れる」と説明した。
トランプ政権はほぼすべての中国製品に制裁関税の対象を広げる「第4弾」をちらつかせている。DWSのショーン・テイラー氏は話し合いが決裂するノーディール(取引なし)の場合「中国の輸出が縮小し、関連企業はより多くの従業員を解雇する。成長率が5%前後の深刻な経済危機に陥る」との見方を示した。
実際、今後1年の貿易戦争の見通しを聞いたところ「変わらない」が47%だったのに対して「改善する」は33%どまりだった。前回調査では改善予想が約7割を占めており、先行きの楽観ムードはやや後退した。
バークレイズの朱懌氏は「20カ国・地域首脳会議(G20サミット)後も貿易の不透明感は根強い。問題が悪化する恐れは減ったものの、合意の可能性が高まったとは言えない」とみる。「貿易交渉がまとまっても、技術の分野で戦略的な競争が続く」(ABNアムロのアリエン・ファンダイクハウゼン氏)との見方も根強い。
内モンゴル自治区の地方銀行、包商銀行の事実上の破綻を受け、金融リスクを懸念する声も出てきた。中信銀行の廖群氏は「中小銀行のシステミックリスクが顕在化した。金融機関の借り入れコストが上昇し、中小企業の資金調達を難しくしている」という。京東数字科技の沈建光氏も「企業の資金繰り難が投資心理を冷やす可能性がある」と指摘した。