ファーウェイ、中国軍とつながり 疑惑相次ぐ
【広州=川上尚志】中国通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)が、中国の人民解放軍とつながりがあるとする新たな疑惑が相次いでいる。このほどベトナムの研究者が、ファーウェイの一部社員は軍と関係があるとする報告書を公表したほか、一部社員が軍の研究に協力していたとの報道もある。ファーウェイはいずれも否定している。ただ安全保障上の懸念から、欧州などで同社の通信機器の不採用の動きが広がる可能性がある。
「ファーウェイは中国の国家や軍、情報収集活動と否定できない関係がある」。米国が資金支援するフルブライト大学ベトナム校のクリストファー・ボールディング准教授はこのほど、こう主張する報告書を公表した。
同准教授はネット上で入手した履歴書を分析し、ファーウェイの少なくとも3人の社員が中国軍や関連機関と関係があると指摘した。例えばファーウェイでソフトウエア技術者として働くある社員は、中国の国防科技大学でも教職に就き軍が雇用しているという。
これに対しファーウェイは「軍などで働いた経歴を持つ求職者を採用する場合は、軍などとの関係は終了したと証明する書類を要求するなど厳しい基準を設けている」と反論。さらに「ネット上で公開されたファーウェイ社員の履歴書なるものが真実であるか確認できない」と指摘した。
ファーウェイを巡っては、複数の社員が中国軍のIT(情報技術)分野の研究活動に協力していた疑いも出ている。米ブルームバーグ通信は6月下旬、過去10年間で無線通信など少なくとも10件の研究について、ファーウェイの複数の社員が中国軍に協力していたと報じた。ファーウェイは「中国軍の関連組織に研究開発で協力することはない」と反論している。
ファーウェイの創業者である任正非・最高経営責任者(CEO)は、創業前に中国軍の工兵部隊に所属していた経歴を持つ。さらに米政府は、同社の通信機器に情報を抜き取る「バックドア(裏口)」が仕込まれ、中国軍などに利用される恐れがあるとの懸念も抱く。ファーウェイは「顧客の不利益になるようなことはしない」と主張し、中国軍との関わりも否定してきた。
ただここにきて中国軍との関わりに関する疑惑が相次ぎ、同社が欧州やアジアなどで注力する次世代通信規格「5G」向け通信基地局の受注活動に響く可能性がある。
米国のファーウェイにに対する強硬論も強まりそうだ。トランプ米大統領は6月末の米中首脳会談後、ファーウェイに対する事実上の輸出規制を緩和する方針を示した。ただ、米国の与野党から制裁緩和に対する批判が出ている。