文科省、ビッグデータ活用し「医療データ人材」育成
文部科学省は医療データを大規模に収集し、分析できる「医療データ人材」の育成に乗り出す。医療機関にある患者の治療記録や検査結果などのビッグデータを活用し、より効果的な治療や薬の開発につなげる。育成コースを新設する大学群を支援し、医療やデータ分析に加えて法律・倫理の知識を身に付けるための教育モデルをつくる。
医療データを巡っては、2018年5月に次世代医療基盤法が施行された。患者が拒否しなければ、国から認定された事業者が医療機関のデータを収集して匿名化し、大学や製薬会社などに提供できるようになった。ただ国内では医療データの収集や匿名化、ビッグデータ分析ができる人材の不足が指摘されていた。
文科省は、大学などがビッグデータとして分析することで、年齢や性別、症状に応じて最も効果的な治療方法や薬の研究が進む可能性があるとみている。コンピューター断層撮影装置(CT)の画像データを人工知能(AI)で解析し、がんの早期発見につなげることも期待されている。
このため同省は6月、東京大を中心とする4大学、京都大を中心とする11大学の2グループを「医療データ人材」の育成拠点に選定。19年度中にカリキュラムの開発、教員の確保などの準備を進め、20年度にそれぞれで育成コースを新設することにした。19年度は1億円を上限に支援する。
コースは修士課程レベルとする。生命に関する個人情報を扱うため、法律や倫理の知識も身に付けてもらう。修了後は大学や製薬企業、自治体などで活躍してもらいたい考えだ。
東大グループは2年の「一般履修コース」と、1年以内の「インテンシブコース」を開設する。医師や看護師、医療データの解析経験がある人らを対象に、初年度はそれぞれ10人、8人を受け入れる。参加する各大学が協力し、医療現場からの生データの抽出や加工、分析などを経験させる。
京大グループは京大医学研究科などにコースを新設する。データに関する法制度についての教育も重視するという。各大学には社会人が企業にいながら学べる短期のコースを置く計画だ。
同省担当者は「将来的には正規の課程にしてほしい。他の大学に人材育成の知見が広がることも期待する」としている。
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