草津温泉で「湯長」廃止へ 違法懸念、惜しむ声も
群馬県草津町は、草津温泉で江戸時代から続くとされる独自の入浴法「時間湯」の指導役「湯長」を来年3月で廃止する方針だ。湯治客に症状や体調を尋ねることなどが医療行為との疑いを招き、医師法違反の懸念があると判断した。一方で湯治文化の伝統を踏まえ「歴史あるものを簡単に変えていいのか。名物がなくなる」(地元住民)と惜しむ声も出る。
「草津よいとこ、一度はおいで」。硫黄のにおいと湯気が立ち込める公衆浴場「千代の湯」で6月下旬、湯長を務める鈴木恵美さん(34)の民謡草津節が響き渡った。
時間湯の入浴客は、湯長の号令に従い、指示された時間や回数で強酸性の湯に入る。「1回3分の入浴を1日3~4回」などさまざまだ。事前の準備運動に、湯長の歌声に合わせて木の板で源泉の温度を下げる「湯もみ」をする。利用者は、観光客だけでなくアトピー性皮膚炎やリウマチに悩む人も多いとされる。
町は、湯長が症状に合わせ入浴法を指導したりする点なども問題視。黒岩信忠町長は「行政として法律違反のリスクは放置できない」と話す。
町によると、町内で「千代の湯」「地蔵の湯」の2カ所が時間湯を行い、ともに有料。いずれも町が草津観光公社を指定管理者とし、鈴木さんら2人いる湯長は公社の臨時職員だ。町は本年度で指定管理者契約を打ち切る。湯長に代わり、症状を尋ねたりせず、号令を掛けるなどするだけの管理人を置き、浴場は無料化する方針だ。
鈴木さんは「体調や既往歴の確認は安全が目的。医療行為のつもりはない。湯長がいなければただの共同浴場になる」と廃止撤回を主張。埼玉県の女性観光客は「少しでも病気が良くなればと願って来る人が困らないようにして」と語った。〔共同〕