EU次期トップ陣の横顔は? 重要2ポストに初の女性
欧州連合(EU)が2日に決めた次期EUトップ人事案では、EUの官僚機構を束ねる欧州委員長と欧州中央銀行(ECB)総裁という2つの重要ポストに初めて女性を起用した。加盟国首脳のまとめ役を担うEU大統領には43歳のミシェル・ベルギー首相を充て、現職のトゥスク氏(62)から大幅な若返りを狙う。新たなEUリーダーらの横顔を紹介する。
メルケル首相の腹心、フォンデアライエン次期欧州委員長
メルケル独首相の信頼が厚く、後継首相や独大統領候補として何度も名前が浮かんだ大物政治家。保守系与党・キリスト教民主同盟(CDU)に所属するが、リベラル思想に理解を示すところもメルケル氏と政治信条が似る。
ブリュッセルで生まれ、フランス語と英語に堪能。裕福な家庭に育ち、身のこなしはスマート。ウクライナ危機、イラン問題、対米外交――。どんな話題でも番記者とのやり取りはそつなくこなす。
ドイツの軍事貢献が少なすぎると批判している米国に国防相として一定の理解を示し、「ドイツは軍事費を増やし、もっと国際貢献すべきだ」という立場。これが北大西洋条約機構(NATO)内などでの国際評価を高めた。
野心家で完璧主義者。それゆえ「人情味に欠ける」との声がついて回る。ドイツの官僚は「失敗すると部下に責任をなすりつける」と陰口をたたく。そんな前評判を覆せるかが課題だ。7人の子どもを持つ母親。60歳。
(ロンドン=赤川省吾)
早咲きの為政者、ミシェル次期EU大統領
ベルギー中部のナミュール出身。2014年、同国の現行制度下で最年少の38歳で首相に就いた早咲きの為政者だ。
父親のルイ・ミシェル氏は外相や欧州委員を歴任した有名政治家で、その背中を追って若くから政治の階段を駆け上がってきた。94年に18歳で州議会議員になり、23歳で下院議員に初当選した。
趣味はバイクやテニス。弁護士でもあり、母語のフランス語のほか英語とオランダ語を操る。政治姿勢は「信念を曲げず頑固」との評がある。
18年12月、ミシェル氏の移民政策に反発した議会第1党が連立政権からの離脱を表明して少数与党に陥った。辞意を表明したが、新たな連立交渉が難航するなか暫定首相にとどまり続けてきた。秋から同じブリュッセルの中で、職場をEU本部に引っ越すことになる。
(ロンドン=篠崎健太)
債務危機対応で脚光の交渉巧者、ラガルド次期ECB総裁
米国の事務所で働いたこともある労働法などを専門にする弁護士で、交渉の巧みさで知られる。もともと経済の専門家ではなかったが、仏財政相時代にはリーマン・ショック、ギリシャ危機などで各国の利害調整にあたり、最終的には高い評価を得て国際通貨基金(IMF)専務理事への道を自ら開いた。
シンクロナイズドスイミング(現アーティスティックスイミング)の元選手という異色の経歴でも知られる。前トップがホテルで女性に暴行した疑いで失脚するという前代未聞の状況のIMFに乗り込み、欧州債務危機などの対応にあたった。
国際的な人脈と組織運営の妙には定評があるが、不慣れな中央銀行でその力量が発揮できるのか。景気減速で荒れ模様の金融市場がその真価を見極めようとしている。
(ブリュッセル=石川潤)
歯にきぬ着せぬ熟練、ボレル次期外交安全保障上級代表
47年、スペイン北東部のカタルーニャ生まれ。18年6月に発足したサンチェス政権で外相に就いた。04~07年には欧州議会議長を務めており、閣僚経験も豊かなスペインの熟練政治家の一人だ。72歳と欧州政治の世界では若くないが、親EUを重視するサンチェス氏が外相に招き入れ、不安定な少数与党政権の重しになってきた。
歯に衣(きぬ)着せぬ物言いで知られる。5月には地元テレビで、南米ベネズエラへの軍事介入をちらつかせたトランプ米政権を「カウボーイのようだ」と批判した。
(ロンドン=篠崎健太)