「ゲノム医療の推進を」 日本学術会議が提言
日本学術会議は2日、様々な病気で患者のゲノム(全遺伝情報)を解析し、個人に合った医療を行う「ゲノム医療」を推進すべきだとする提言を発表した。これまでゲノム情報と病気の関係性を調べる医学研究はがんや一部の遺伝病に対象が限られていたが、近年は欧米の大規模なゲノム解析で認知症や生活習慣病の治療、予防につながる成果が出ている。提言では今後、国内でも様々な病気ごとに数万人規模のゲノム情報を解析し、日本人向けの医薬品や治療法の開発を進めることが重要だと指摘した。
海外では英国の「UKバイオバンク」や米国の「オール・オブ・アス」など、国の関与のもとで数十万人から百万人規模のゲノム情報を集めるプロジェクトが進んでいる。こうした大規模なデータベースを基に、病気の発症に複数の要因がからむ糖尿病や高血圧などの生活習慣病でも、ゲノム情報との関係が明らかになりつつある。
一方で、ゲノム情報と病気の関係は地域や民族ごとに異なり、海外の研究成果が日本人のゲノム医療に使えない場合がある。そのため、提言では病気の種類ごとに数万人規模で日本人のゲノム解析を進めるべきだとした。
国内では現在、10万~30万人規模で血液などの試料を集める複数の事業が国の研究機関や大学で進むが、試料があっても予算不足などでゲノム解析が行われていないケースも多い。提言では、こうした事業の連携や、ゲノム解析の研究体制の整備が必要だと指摘した。
提言は医療現場にゲノム医療の知識を持つ人材が不足しているとして、現場の医師や看護師を対象としたゲノム医療の教育の必要性にも触れた。ゲノム医療について患者のカウンセリングなどを行う専門人材も充実すべきだとした。