エボラ輸入で国と市が合意 五輪控え、検査体制強化 国内初、今夏にも
根本匠厚生労働相は1日、東京都武蔵村山市の藤野勝市長と会談し、市内にある国立感染症研究所の施設にエボラ出血熱など5種類の感染症の原因ウイルスを輸入することで事実上合意した。
2020年の東京五輪・パラリンピックを控え、海外から持ち込まれる恐れがある感染症を素早く正確に検査できるようにするのが目的。近く正式な手続きに入り、「最も危険」と分類されるウイルスが今夏中にも初めて海外の研究機関から持ち込まれることになる。
根本厚労相は会談後、「一定の理解が得られた。国民の生命、健康を守るため大きな一歩を踏み出すことができた」と述べた。藤野市長は「検査体制の強化はやむを得ない。安全対策について国の責任でしっかり対応してもらいたい」と語った。
輸入対象は、感染症法で最も危険な病原体に分類されるエボラ熱やラッサ熱、南米出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、マールブルグ病の原因ウイルス。いずれも致死率の高い出血熱で、国内の研究機関は所有していない。エボラ熱は血液などの体液や排せつ物を通じて感染する場合が多い。ほかの病気はネズミなどの齧歯(げっし)類やダニが媒介することがある。
計画では、村山庁舎にある、エボラウイルスなどを扱える最高水準の漏出対策が施されたバイオセーフティーレベル(BSL)4の施設に保管。感染が疑われる人が出た場合の迅速な診断や回復の判断に役立てる。
会談で藤野市長は事故発生時に速やかに情報提供することや施設移転について検討することも要望した。
国内で稼働中のBSL4施設は村山庁舎の施設のみ。このほか、長崎大が2021年度の完成を目指して研究のための施設を建設中だ。〔共同〕