日本製鉄の資産現金化、越年も 原告弁護団が発表
裁判所が尋問手続き求める
【ソウル=鈴木壮太郎】韓国の元徴用工訴訟の原告側弁護団は1日、日本製鉄の韓国内資産の現金化が遅れる見通しになったと発表した。最短で2019年8月ごろとみていたが、裁判所が現金化には日本製鉄への尋問手続きを踏む必要があると判断した。その時間を考慮すると、越年の可能性も出てきた。
原告側が5月1日、日本製鉄が持つ韓国鉄鋼大手ポスコとの合弁会社「PNR」の株式19万4千株の売却命令を出すよう裁判所に申請していた。9億7000万ウォン(約9000万円)の現金化をはかった。
原告側は当初、申請から最低3カ月で現金化が完了すると見込んでいた。売却にあたっては通常、債務者の意見を聞く尋問手続きを経るが、債務者が外国にいる場合は省略できる。原告側は日本製鉄が外国企業のため尋問を省けると考えていたが、裁判所が必要と判断した。
日本製鉄への尋問手続きを考慮すると、5月の申請から現金化まで「7~8カ月以上の時間がかかる」(原告弁護団)。最短でも12月か翌年1月になるとの見立てだ。
日本製鉄の資産差し押さえ手続きは、18年10月に韓国大法院(最高裁)が同社(当時は新日鉄住金)への賠償命令を確定させたことで進んだ。日本政府は1965年の日韓請求権協定で、元徴用工問題は「解決済み」との立場だ。
差し押さえ資産の現金化は、日本政府が韓国への制裁に踏み切るトリガーだ。日本政府は1日、韓国への半導体材料の輸出規制を厳しくすると発表し、韓国への事実上の対抗措置に踏み切った。現金化が完了すれば、さらなる制裁強化に踏み切るとみられる。