EUトップ人事で大詰めの調整 首脳会議
【ブリュッセル=竹内康雄】欧州連合(EU)は30日、ブリュッセルで臨時首脳会議を開いた。今秋に任期満了を迎えるEU機関のトップ人事を決めたい考え。EUの針路を決める人事だけに各国の主張が対立して調整は難航していたが、ここにきて打開点を探る動きが活発になってきた。
マクロン仏大統領は開幕前、記者団に「(首脳会議で)3つのポストを決めたい」と語り、欧州委員長、EU大統領、EUの外相にあたる外交安全保障上級代表を中心に議論するとの考えを示した。欧州中央銀行(ECB)総裁の決定は少し後になるという。
欧州委員長人事ではメルケル独首相らが、欧州議会選で最大勢力の会派が推す候補が就くというルールに基づき、欧州人民党(EPP、中道右派)のウェーバー欧州議員(ドイツ出身)を推してきた。マクロン氏らは経験の少なさなどを理由に強硬に反対している。
複数の欧州メディアによると、メルケル氏らはウェーバー氏では各国首脳の支持を得るのは難しいとの判断に傾きつつある。その結果、議会第2会派の欧州社会・進歩連盟(S&D、中道左派)が推すティメルマンス欧州委員会第1副委員長(オランダ出身)がレースの先頭を走っている。
英紙フィナンシャル・タイムズによると、ウェーバー氏は欧州議会議長に就く可能性が浮上しているという。
ただティメルマンス氏は欧州委で「法の支配」を担当し、欧州委と距離を置くポーランドやハンガリーなど東欧の一部の国の政権と激しく対立してきた経緯がある。人事はなお流動的で、会合前、メルケル独首相は「簡単な議論にはならないだろう」と語った。
EUの執行機関トップである欧州委員長とECB総裁は10月に、EU首脳会議の議長を務めるEU大統領は11月に任期満了を迎える。各国首脳はまず欧州委員長を決める考えだ。欧州委員長は各国首脳らが指名し、欧州議会の承認を得て就任する。
人事が本格化したのは5月下旬の欧州議会選から。各国首脳は20~21日の首脳会議でも欧州委員長の選出を議論したが、結論は出ずに30日に持ち越された。28~29日に開かれた20カ国・地域首脳会議(G20大阪サミット)には仏独伊など主要国が参加しており、水面下で調整を重ねたようだ。