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日韓の首脳対話見送り 元徴用工対応進まず

企業資産売却の恐れ

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安倍晋三首相は大阪で開催した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)で、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領との会談を見送った。韓国側は希望したが、日本側が元徴用工訴訟を巡る問題で進展が得られないと判断した。外交解決が当面望めない状況となり、原告側が被告企業の資産売却に踏み切る可能性が高まった。日韓経済への一段の悪影響は不可避だ。

2日間のサミットの間、日韓両首脳が接近したのは28日の会議と夕食会で安倍首相が各国首脳を出迎えた時だけだった。出迎え時はともに硬い笑顔を浮かべて握手をした。河野太郎外相と韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は28日夜に短時間、立ち話をしたが、双方の立場を主張し合うにとどまった。

日本政府は早い段階から首脳間の公式会談は見送る方針だったが、結果的に短時間の接触すら避けた。理由は韓国外務省が19日に公表した対応策だ。日韓の企業が自発的に資金を出し合って原告と和解する案で、実は日本は韓国側から事前に持ちかけられた段階で受け入れを拒んでいた。

韓国政府は日本の反対をわかった上でこの案を発表した。文氏は26日の聯合ニュースなどとのインタビューで「現実的な解決案だ」と指摘し、安倍首相に会談を呼びかけて「機会を活用できるかは日本にかかっている」と日本側の責任を強調した。

日韓関係の基礎をなす1965年の日韓請求権協定を踏まえていないこの案を日本が受け入れることはできない。個人の請求権問題を「完全かつ最終的に解決された」とうたい、日本は韓国に5億ドルの経済支援をした。歴代の韓国政権もこの認識を踏襲してきた。

しかし、文政権は韓国大法院(最高裁)が下した日本企業への賠償命令について「司法判断を尊重する」とだけ述べ、日本との条約を守る立場は明確に示していない。日本側は文政権が請求権協定の見直しを提起してくる可能性を疑っている。

首脳の対話すら成り立たず、事態解決への展望は開けない。差し迫るのは、原告側による日本企業の資産売却だ。日本製鉄(旧新日鉄住金)と不二越は韓国合弁企業の株式が差し押さえられ、近く裁判所の売却命令が下るとみられる。三菱重工業についても、原告側は同社が7月15日までに賠償協議に応じなければ、韓国内の知的財産権を売却する手続きに入ると表明している。

資産売却された場合、日本政府は何らかの報復措置を取る方針で、日本企業が韓国での事業展開をリスクとみる空気はさらに広がる。規模や人員、新規投資の削減などを探る動きがすでに出始めている。

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