「2020」はスポーツビジネス商機 首都圏新興企業動く
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首都圏でスポーツ関連の新しいビジネスが相次ぎ生まれている。スタートアップやベンチャー企業が競技力の向上支援や、スポーツの新しい楽しみを提案するサービスを展開する。2020年の東京五輪・パラリンピックを機に、行政もスポーツの盛り上がりを産業振興につなげようと、起業家を支援する。
2月、卓球の張本智和選手や水谷隼選手らが出場したTリーグの試合会場。映像システム開発のAMATELUS(アマテラス、東京・渋谷)はスマートフォンで360度から撮影した動画の配信サービス「スワイプビデオ」を実証実験した。複数のスマホで撮影し、インターネットを通じ試合動画をあらゆる角度から見られるサービスだ。
同様の自由視点映像技術は大手企業も持つが、同社のサービスは映像処理の負荷が軽いのが特徴だという。データ変換と配信技術の特許を出願中だ。17年1月に会社設立。埼玉県横瀬町との連携を機に少年野球やサッカーのチームで実験を繰り返し、画質やズーム機能など改良を重ねてきた。
3月、学校法人三幸学園がトレーナー養成の専門学校でスワイプビデオ専用スタジオを設けた。アスリートなどのトレーニング動画を撮り、360度映像を教材として活用している。Tリーグでも選手のフォームやダブルスの動きを検証するために導入を検討中だ。20年に向け「新たな観戦スタイルの提供も目指す」(下城伸也CEO)。
ロッキンプール(東京・台東)は水中ゴーグルに映像を流す技術を生かし、子どもや高齢者、障害者が気軽に水泳を楽しめるサービス開発に取り組む。18年にはANAホールディングスと連携し、横浜市内の小学校のプールで実験した。
ドローンで空撮した仮想現実(VR)映像を水中ゴーグルに流し、泳ぎながら空を飛ぶような感覚を楽しめる。児童だけでなく、障害者競泳の選手も映像効果を体験した。今後は水中で動きながらゲームや競争を楽しむ機能の開発も目指す。
競技選手としての経験をビジネスに活用するのは、ウェブサイト制作のルピナス(千葉市)。18年11月、水泳の練習器具「キャッチパドル」の販売を始めた。子供やシニアも使いやすいよう柔軟性のある素材を採用している。開発したのは競泳元日本代表で、同社取締役の小坂悠真さん。「選手時代の経験を生かせば価値が生み出せる」と商品開発に乗り出した。
16年秋にはオンラインでの動画指導サービスも始め、既に150人ほどが利用した。「事業を通じて選手のセカンドキャリアやパラレルキャリアの成功例を作りたい」と小坂取締役は話す。
自治体もスポーツ関連分野の起業家育成に乗り出している。埼玉県は埼玉西武ライオンズや浦和レッズなどの地元プロチームと連携。チームから課題を出題してもらい、起業家からビジネスプランを募った。18年度はスポーツ人口の増加、人工知能(AI)を使った顧客満足度の向上などを課題テーマに設定。4社が支援対象に選抜された。 4社には、育成事業を受託したデロイトトーマツグループや県の創業支援機関などが事業計画の磨き上げ、協業先や販路先のマッチングまで伴走支援する。プロチームとの実証実験も夏から始まる。
東京五輪・パラに向けスポーツに関心が高まっているのを追い風に、新しい産業創出の波が生まれている。スポーツを一過性のブームに終わらせないためにも、官民一体となったスポーツ産業の振興に期待がかかる。(藤田このり)