記者殺害は「サウジの責任」、国連報告者が明言
【ジュネーブ=細川倫太郎】国連のカラマール特別報告者は26日、トルコで発生したサウジアラビア人記者の殺害事件に関する調査結果を国連人権理事会で報告し、「サウジ以外の責任は考えられない」と明言した。「国際的な犯罪だ」とも述べ、さらなる調査の必要性を訴えた。事件の幕引きを急ぎたいサウジ政府には圧力となりそうだ。
著名記者ジャマル・カショギ氏は2018年10月、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館を訪れた際に殺害された。カラマール氏は国連人権理事会からの委託で約半年間、トルコ訪問や関係者への聞き取りで事件を調べた。特別報告者が個人の殺害を調査するのは極めて異例だ。
カラマール氏は26日の国連人権理事会で「米国に亡命したカショギ氏を黙らせるのが殺害の動機」と指摘した。計画は慎重に進められ、政府高官によって承認されたとも述べ、ムハンマド皇太子らの関与をうかがわせる信頼できる証拠もあるとした。調査のためにサウジへの訪問許可も求めたが「(サウジからは)今のところ返事は何もない」と話した。
各国・地域からは懸念や真相究明を求める声が相次いだ。ドイツは「殺害は正当化できず、強く非難する」と指摘し、欧州連合(EU)は「表現の自由への攻撃だ。サウジに情報提供と捜査への協力を求める」と話した。一方、サウジは「(カラマール氏の)証言は信頼できる情報に基づいていない」と反論した。
カラマール氏が19日にまとめた約100ページに及ぶ報告書では、国連主導でさらなる調査を求めた。欧米がサウジに科している制裁の効果にも疑問を呈し、責任がないと証明できるまでは皇太子らの海外資産の凍結など制裁を強化すべきだと指摘した。
今回の報告を受け、国連人権理事会は専門調査団の設置やサウジに捜査協力を求める決議などを採択する可能性はある。人権理事会の決議に法的拘束力はないが、国際社会からのサウジへの圧力にはなり得る。