ロッテHD株主総会、創業者長男の復帰議案を否決
5回目 融和演出も実結ばず
ロッテホールディングス(HD)が26日都内で開いた定時株主総会で、創業者・重光武雄氏の長男である宏之元副会長が、解任された取締役に自身を選任するよう求めた議案が否決された。同議案の否決は5回目。宏之氏は今回、経営権を巡って対立する弟の昭夫副会長に対する解任提案を見送るなど融和を演出したが実を結ばず、復帰は厳しい情勢だ。
宏之氏は非上場のロッテHD株の約3割を保有する一族の資産管理会社を支配しており、株主提案を毎年している。自身の選任議案は従業員持ち株会や役員持ち株会などの反対で否決された。会社側が提案した役員選任などの議案は全て可決し、約1時間で終了した。
ロッテHDの副会長だった宏之氏は2015年、昭夫氏ら他の経営陣と対立。経営面で悪影響が及びかねない事業を強引に進めたなどとして解任された。宏之氏を支持して昭夫氏解任に動いた武雄氏も代表権が外れ、昭夫氏がロッテグループの経営権を掌握した。
反撃に出た宏之氏は、自身の選任だけでなく昭夫氏の解任なども株主提案で求めてきた。今回、解任提案を見送ったのは「過去の遺恨を水に流して和解したかった」(宏之氏の代理人)からだ。
宏之氏は複雑な資本関係を解消して日韓それぞれの独立性を高め、兄弟間ですみ分けることを昭夫氏に提案してきた。昭夫氏から明確な返答はないというが、ロッテ社内では宏之氏に対して冷めた見方も広がっている。
関係者によると、宏之氏は総会でも回答を求める発言をしたが得られなかった。総会後に出した談話では「6月末日までに返答がなければ、グループの安定のために取り得るその他の対応を今後も継続」するとした。
宏之氏はさらにロッテHDの連結決算(韓国を含むグローバル)の最終損益が18年度に赤字だったとして、総会で責任の所在についても質問した。談話では「取り巻く環境は悪化の一途をたどっている」と憂えた。
ロッテを巡っては昭夫氏にも不安な点がある。重光家の母国である韓国で昭夫氏が、朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈賄罪に問われた裁判の一審で実刑判決を受けた。昭夫氏はロッテHDの代表権を返上したが、控訴審では執行猶予付き判決に減刑されたため、代表取締役に復帰した。
ロッテHDは昭夫氏主導で日韓グループ会社の再編や企業統治改革を進めてきた。だが、昭夫氏は韓国ロッテに対する背任罪でも韓国検察に訴追されている。朴前大統領への贈賄罪の裁判と審理を併合した上告審を控えた身だ。仮に有罪が確定すれば、経営は混乱が避けられない。
日本側の主力の菓子事業そのものは堅調だ。ロッテHD傘下の製菓事業3社が合併して18年4月に発足した新たな事業子会社のロッテが担う。今春、商品受発注システムの不具合で配送が遅れるトラブルがあったが、18年度は猛暑でアイスクリームが伸び、機能性を高めたチョコレートやガムも売れて増収増益だったもようだ。
事業子会社のロッテは株式上場を目指している。裁判や創業家の対立の行方は、その実現にも暗い影を落とす可能性がある。
(大林広樹、下川真理恵)
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