サッカー代表、3大会で成果 東京五輪へ競争激化
サッカージャーナリスト 大住良之
エクアドルに勝ちきることができず、日本代表のコパアメリカ(南米選手権)はグループリーグ敗退で終わった。しかし今大会に参加した若い代表チームは、試合ごとに成長と進化の跡を見せ、最終的には、優勝候補筆頭のブラジルとの対戦を見たかったと心から思えるチームとなった。
■「日本は組織立った強豪だった」
初戦のチリ戦で0-4の完敗を喫し、メディアだけでなく出場チームの監督たちからまで「日本は若手で参加するなど、南米選手権をばかにしている」と大批判を受けた。しかし、エクアドルのエルナン・ゴメス監督が「南米の人々が日本をないがしろにするようなことをしてすまなかった。日本はスピードがあり、非常に組織立った強豪チームだった」と話したように、最後はその積極果敢なサッカーが高く評価された。
チリ、ウルグアイ、エクアドルと対戦した3試合を振り返ってみると、大きな分岐点は、チリ戦の完敗から見事な立ち直りを見せたことにあったように思う。
ウルグアイ、エクアドル戦での計3失点はいずれも、ラフな放り込みによる相手の攻撃を断ち切れなかったからで、大きな課題として残った。しかしこの2試合でつくり出したチャンス、結果としての3つのゴールは、すべて日本の特徴や個々の強さを示した見事なものだった。だからこそ、この2試合を勝利につなげるために必要だった「決定力」が改めてクローズアップされることになったのだ。
さて、6月24日に南米選手権での活動が終わったことで、若手の男子代表の活動がひと区切りついた。
5月23日に始まったU-20ワールドカップ(ポーランド)では、強豪メキシコに3-0で勝つなど、攻撃面で高いクオリティーを示した。GK大迫敬介、MF安部裕葵、MF久保建英の3人が「南米選手権要員」に回されたことで懸念された戦力低下などを忘れさせ、「日本のU-20代表史上、最も高いポテンシャルをもったチーム」という評価さえあった。
それに続いたのが、6月1日からフランスで行われた「トゥーロン国際大会」に参加した「U-22日本代表」だ。といっても、この年代の中心選手はすべて南米選手権にもっていかれ、いわば「Bチーム」と言っていい陣容だった。そんなチームが圧倒的な攻撃力を見せ、視察した欧州のクラブ関係者を驚かせた。なかでもグループリーグでチリに6-1で勝った試合は圧巻だった。そしてこの大会で初めて決勝に進出。その決勝はブラジルと1-1で引き分けながらPK戦で敗れた。
そして6月14日に開幕した南米選手権では、「東京五輪世代」の若手が、経験豊富なベテランや中堅に負けない活躍を見せた。
DF冨安健洋(この選手は昨年来A代表でも完全なレギュラーだ)だけでなく、MF板倉滉、MF三好康児、MF久保建英らは、堂々たる「日本代表」のプレーぶりだった。
この1カ月で、日本の若いチームは計12試合を戦い、3勝6分け3敗(PK戦は引き分け扱い)、総得点18、総失点15という結果を残した。だがその数字以上に大きな収穫があった。そしてその収穫は、来年の東京五輪に直結するものだ。
■五輪代表枠はわずか18人
オリンピックの登録選手枠はわずか18人。もし3人の「オーバーエージ枠」をフルに使うなら、来年「23歳以下」で迎える選手はわずか15人となる。そしてこの1カ月の3つの「日本代表」の活動によって、その15ないし18人への競争が「フルオープン」になったと、私は強く感じたのだ。
U-20代表(1999年以降の生まれ)の22人、「トゥーロン」に出場したU-22代表(1997年以降の生まれ)22人、そして南米選手権の日本代表18人。このうちMF伊藤達哉はU-22と南米選手権に重複して参加したから、計61人の「オリンピック候補」がこの1カ月間に真剣勝負に挑んだことになる。森保一監督(A代表と五輪代表監督を兼務)とともに、トゥーロンで指揮をとった横内昭展監督代行、U-20代表を率いた影山雅永監督らで、この61人のパフォーマンスやチーム内での行動を徹底分析し、東京五輪に向けてのチームづくりが進められることになる。
ともに南アフリカ、ブラジル、ロシアのワールドカップ3大会を経験し、合わせて日本代表出場200試合を優に超えるGK川島永嗣とFW岡崎慎司の2人が「若手との競争」のなかで若々しいプレーを再発見したように、「競争」はチームを強くする最も重要な要素である。この1カ月で急速に激化した「東京五輪代表争い」は、東京五輪だけでなく、その先の2022年ワールドカップへの期待をかきたてるものとなった。