オリ「華」候補の頓宮もがく 守りの不安、打棒に影
見せるプロ野球だから"華"が欲しい。だが、オリックスには地味なタイプの選手が多い。フルスイングの吉田正尚が目立つぐらい。そこへ、パワフルで明るい男がやってきた。ドラフト2位の頓宮裕真(22)である。
入団時は野球以外のことばかりが話題になった。「とんぐう」という珍しい姓、パンチパーマの頭髪など……。大学日本代表の4番を張った実力派にすれば不本意だっただろう。
その打撃は春先から十分に目立った。亜大では捕手だったが、オリックスでは打力を生かすため三塁で鍛えられることになった。新人でただ一人1軍スタート。開幕の日本ハム戦に5番三塁でデビューした。
4番吉田正の後ろに新人が座るだけでも荷が重い。だが、頓宮は初回1死満塁で立った初打席で先制2点打を放った。3戦目でも日本ハムのエース有原航平から安打を打ち注目された。
チームは開幕直後に2引き分け4敗と、スタートダッシュに失敗した。この暗いムードを頓宮が打ち破った。4月5日の楽天戦で決勝打を放って今季初勝利に貢献。初めてヒーローインタビューを受けた。
夢中でいるうちはいいが、周りが見えてくると怖くなる。ずっと5番三塁で起用されたが、内角攻めに苦しむようになる。ベンチの配慮で、打順を7番に下げてもらったこともあった。
4月18日の日本ハム戦、翌19日の楽天戦で1、2号ホーマーを連発、復調するかに見えた。だが、三塁守備の不安がずっとつきまとい、それが打撃にも影響した。同20日から4試合連続ノーヒット。このあと4試合連続でベンチを温め、5月1日に2軍落ちした。
■伸びない三塁守備、捕手再挑戦も
2軍で内角打ちと守備練習を重点的にこなしたあと、5月24日に1軍へ戻った。復帰第1戦の楽天戦に6番三塁で出て1安打1犠飛。同第3戦でも先制の3号ソロを放った。だが、依然として守備は不安。続くソフトバンク戦での拙守で、ついに首脳陣の怒りを買った。
同29日。四回に失点につながる失策を犯した。五回にも続けてゴロ処理をしくじった。「積極的なミスは責めない」という姿勢を貫いてきた西村徳文監督だが、懲罰に似た交代を命じた。翌30日に2軍落ち。復帰して5試合、6日間の1軍滞在だった。
三塁手に転向したばかりの元捕手を一人前に仕立てるには時間がかかる。それは承知の上だが、遅々として伸びない姿に目をつむるのにも限度がある。頓宮自身、行き詰まりを感じたのか、このほど捕手再挑戦を決めたようだ。チームで貴重な「華」候補の今後に注目したい。
(スポーツライター 浜田昭八)