ゴルフ文化、日本にも JGAが旗振り役に
ゴルフジャーナリスト 地平達郎
ゲーリー・ウッドランド(35、米国)のメジャー初優勝で幕を閉じた男子ゴルフの第119回全米オープン。舞台となったペブルビーチ・リンクスは、パブリックながら全米オープン開催は今回が6回目という、世界でもっとも有名なコースのひとつである。
そのペブルビーチで、本番前に米国ゴルフ協会(USGA)主催の特別なイベントが行われた。メジャー通算18勝の史上最多記録を持つ「帝王」ジャック・ニクラウス(米国)が、自身のフェイスブックで、写真とともにその模様を伝えている。
現存する全米オープン優勝経験者は36人で、そのうち32人が今回開かれた「Reunion of Champions」に顔をそろえたという。日本語に訳すと「優勝者たちの同窓会」とでもなろうか、歴代優勝者らの顔触れとともに、その集合写真のすごさに圧倒される。
最前列中央で、ひときわ大きなひじ掛け付きの椅子に座っているのはニクラウスとゲーリー・プレーヤー(南アフリカ)の2人。故アーノルド・パーマー(米国)とともに「ビッグスリー」と呼ばれたレジェンドで、ゴルフ界ではまさに特別な存在であり、別格の扱いであることがうかがえる。
ニクラウスとプレーヤーの左右に6人が脇を固めるように椅子に腰を掛けているが、ほぼ年齢順で、あのリー・トレビノ(米国)やトム・ワトソン(米国)でさえ端のほうにいる。さすがのタイガー・ウッズ(米国)も、これだけのメンバーがそろうと2列目で立ったままというのが面白い。
「先人たちを敬い、大切にする」のは、移民で成り立つ米国民の心底に流れるフロンティア精神とされるが、これだけのプロゴルファーを集める、集まる米国ゴルフのすごさを垣間見る気がする。さらに、企画したのが本来アマチュアの団体であるUSGAだということも特筆もので、ニクラウスも「このすばらしい日をつくってくれたUSGAに特別な感謝を」とつづっている。
■ゴルフ文化育む気持ち、アマもプロも
ゴルフを単なるスポーツ、賞金のかかったイベントとして捉えるのではなく、「文化」のひとつとして育てていこうとする気持ちがアマ、プロにかかわらず浸透しているように思う。プロたちがごく当たり前のように行うボランティア活動やチャリティー活動、さらにトーナメントでのファンサービスなど、いろんな面で実践されている。
米フロリダ州に「世界ゴルフ殿堂」がある。世界のゴルフ界に功績のあった人たちを末永く顕彰しようというもので、日本からも樋口久子、青木功、岡本綾子、尾崎将司の4人(選出順)が殿堂入りを果たしている。
ニクラウスやプレーヤーらプロゴルファーはもちろん、ボビー・ジョーンズ(米国)らトップアマ、USGAなどの団体設立に貢献した人、コース設計家、さらに喜劇俳優のボブ・ホープ(米国)らトーナメントのホストとして貢献のあった有名人ら、選出分野は多岐にわたり、まさに「ゴルフ文化」を醸し出す施設である。
日本にもゴルフの発展に寄与した人物がたくさんいるはず。時の流れの中に埋もれてしまう前に、その人たちを顕彰し、若い人たちが目標にするようになって初めて、日本のゴルフ文化が芽生え、育つのではないだろうか。
そのいちばんの旗振り役であるはずの日本ゴルフ協会(JGA)が中心となって、日本を代表する組織・施設を作る時期に来ているように思う。