野村、古賀会長の2委員長兼務案撤回 反対株主に配慮
野村ホールディングスは18日、古賀信行会長を指名委員会と報酬委員会の委員長に就ける案を変更すると発表した。米議決権行使助言会社が古賀氏を含む取締役の再任案に反対を表明している。保有する野村総合研究所(NRI)の株式を一部売却し、最大1500億円の自社株買いを実施するとも公表した。来週24日に株主総会を控え、人事案の修正と株主還元の強化で理解を求める。
野村HDは5月下旬に送付した株主総会の招集通知で、古賀会長が指名・報酬委員長を続けると記載していた。だが、両ポストに社外取締役である日本たばこ産業(JT)元会長の木村宏氏が就くと改めた。監査委員会の委員長には以前から社外取締役が就いている。野村HDでは3委員会全てのトップが社外になれば、「一層のガバナンス(企業統治)の強化が図られる」としている。
総会直前のタイミングで変更を迫られたのは、会社側の取締役選任案の可決が危うくなる恐れがあったためだ。
6月上旬までに、米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が古賀会長と永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)など3人、グラスルイスが古賀会長の再任に反対を表明した。古賀会長は取締役会議長でもあり、重要ポストが同一人物に偏りすぎているとの指摘があった。
野村HDは対応に追われた。厳しい姿勢を見せたのが株式の3分の1以上(単元株ベース)を保有し、企業統治に敏感な海外投資家だ。2つの助言会社が古賀氏再任に反対したことで、支持を得るのが難しくなった。
野村HDは2019年3月期に1000億円を超える連結最終赤字を計上している。5月には東京証券取引所の市場区分の再編に関する情報漏洩で金融庁から業務改善命令を受け、経営環境は厳しい。株価も低下基調から抜け出せず、株式の3分の1超を保有する個人投資家がどう動くかも読みづらい。
自社株買いには株式需給を改善させ、株主還元を強化する狙いがある。NRIが実施する自己株式のTOB(株式公開買い付け)に野村HDが応じる形で保有株を売却し、これで得られる約1600億円の現金を自社株買いの原資とする。NRIへの出資比率は子会社の保有分と合わせて約37%から約23%に下がる。
野村HDでは傘下の野村証券の25店舗を9月末までに他店舗に統合するなど構造改革も進めているが、顧客層の高齢化といった問題もあって収益構造の立て直しは容易ではない。不祥事を根絶しきれないという体質的な問題もある。企業統治の強化と自社株買いを打ち出したものの、総会では一部の株主からは不満や疑問の声が出そうだ。
総会対応の難しさが増しているのは日本企業全体の問題でもある。経営に口を出さない「持ち合い株主」が減り、企業統治や収益性の向上を厳しく求める海外投資家などの力が増した。徐々に本格化する今年の総会では波乱の動きが相次ぐ可能性がある。