シニアツアーに新風　谷口、手嶋ら実力者が続々

男子ゴルフのシニアツアーで、歴代賞金王ら実力者が続々シニアデビュー、新風を吹き込んでいる。2018年にシニア参戦した伊沢利光（51）は1995年日本オープンなどツアー16勝を挙げ2001、03年の2度賞金王に輝いた。昨夏の日本シニアオープンでシニア初出場、2位に入った谷口徹（51）も02、07年の賞金王だ。日本オープン2勝、日本プロは昨年、大会史上最年長の50歳で制覇、3勝目を飾りツアー20勝に到達している。

昨年はほかに09年日本ツアー選手権覇者の五十嵐雄二、日下部光隆、立山光広（いずれも50）もシニア入り。今年は日本オープン、日本プロ各1勝の手嶋多一、深堀圭一郎、桑原克典、桑原将一（いずれも50）とツアー優勝経験者が登場している。いまだにレギュラーツアーで奮戦するなじみの名手がいれば、「君の名は」状態、ゴルフ通でなければ名前を覚えていないような顔ぶれも。また12年賞金王の藤田寛之は16日に50歳になったばかりで、米ツアー3勝の丸山茂樹は9月12日が誕生日だ。日本シニアオープン（9月19～22日、埼玉・日高CC）の出場が待たれる。

今季第5戦、スターツシニア（6月14～16日、茨城・スターツ笠間GC）には谷口が今季初出場、シニア2戦目で初優勝を目指した。しかし、プラヤド・マークセン（タイ）に敗れた日本シニアオープンに続き、またもや2位。首位で出た同組のマークセンに一時は4打差をつけられながらかわしたが、エージシュートに迫る64の快進撃をみせた倉本昌弘（63）にプレーオフで敗れた。

18番（パー5）でティーショットが左ラフにつかまった倉本を横目にフェアウエーをキープ。ところが第2打が「グリーンセンターに乗っけようとライン出しをしたら、ダフった。雑念もダメですね」。花道からのアプローチもミスしてパーにとどまり、アプローチをうまく寄せ3メートルのバーディーパットを沈めた倉本に屈した。「やーっ、ガッカリ」。前半はチャンスを再三逃すなど、初めてのコースでグリーンを読み切れなかったのも響いたようだ。

■谷口「シニアだろうが優勝は大変」

今季はレギュラーツアー国内開幕戦の東建ホームメイト杯で3日目に右腰に違和感を感じたそうで、ずっと体の状態が思わしくなかった。全米プロシニア選手権もキャンセル。前週の日本ツアー選手権は右足痛のため途中棄権している。「スイングが悪いから、体に負担がかかっているのか」

ただスターツでは練習場でハーフショットの練習を繰り返しドライバーショットが復調、アイアンも芯で捉えられるようになったという。悔いの残るプレーオフ敗退にも「課題にしていたショットも、いっときの病んでる状態から、だいぶ良くなった」。次週のダンロップ・スリクソン福島オープン（グランディ那須白河GC）、前年覇者として臨む日本プロ（鹿児島・いぶすきGC）と続くレギュラーツアーへ、収穫もあったようだ。

レギュラーツアーだと第2打はほとんど一番先に打ち「セカンドオナー慣れしている」のに、シニアだと2番手、3番手で打つことも度々で、どうも勝手が違うよう。「楽しいけど（先輩プロばかりで）あいさつで気疲れも」と笑う。「シニアだろうが、優勝するのは大変」と改めて実感させられた。

■手嶋「雰囲気があったかくていい」

同週にレギュラーツアーがなかったため、スターツシニアには手嶋も参加した。シニアデビューした開幕戦の金秀シニア沖縄オープン（かねひで喜瀬CC）に続くシニア2連勝を目指したが、3位タイで迎えた2日目に失速、8位にとどまった。だがレギュラーツアーでランク88位に終わり22年間守った賞金シードを手放した昨季に比べ、ゴルフの状態はずっといい。「去年は予選通過にきゅうきゅう」したが、アジアパシフィック・ダイヤモンドカップは13位、ツアー選手権は15位で楽々予選をクリアしている。「それからがもう一つのテーマ。3日目、4日目に伸ばしていかないと」

5月下旬にはメジャーの全米プロシニアにも出場、18位に入った。メジャー3勝で元世界ランク1位のビジェイ・シン（フィジー）とも同組でラウンド。「（会場の）オークヒルCCは素晴らしかった。持って生まれた自然の難しさがある。コース攻略にはドロー、フェード、高い球、低い球と打ち分けないといけない。考えさせられるし、こういう所でやっているとうまくなる」。国内シニアでも活躍し、全米シニアオープンなどメジャーに挑戦したいという。

またシニアツアーについて「雰囲気があったかくていい。ふだん交われない先輩と一緒で楽しい。プレーは早く、僕にはやりやすい」と笑顔で話す。谷口と同じくレギュラーツアーと掛け持ちで、次戦は日本シニアオープンの予定だ。

深堀は国内シニアで4戦、米シニアのマスターカード・ジャパン選手権（27位）にも参加した。「パットがダメ」で9位がベスト。「以前は調子がいいと3週間くらい続くけど、最近は良くても1週間。日によって違う」。"日替わりゴルフ"に、40代後半から悩んでいるという。トレーニングや体のケア、サプリメント摂取などで、体調維持に腐心している。

ツアーではシード権がなく、予選会や推薦出場でシード復帰への道を探る。シニアでも「先輩方は強いし、優勝はそう簡単にはいかないのはわかっている」。ただ、やはり日本シニアオープンが一番のターゲット。「（盟友の）丸山もシニアへやる気になっている。僕もまだやれそうだし、ゴルフを長くできれば」と今後へ意気込みをみせる。

スターツシニアで3年ぶり8勝目をマークした倉本も、日本プロゴルフ協会（PGA）会長として「谷口も手嶋も50にして強い。藤田らこれから入ってくる選手はレギュラーと掛け持ち。実力があるし活気づく」と期待を寄せる。その一方、くぎを刺すのも忘れない。「プロアマ戦でちゃんと対応できる選手に活躍してもらいたい。しっかりとスポンサーの心をつなぎ留められるツアーにしないと」